2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘレニズム・ローマ期の哲学における「運命」論の全体像
Project/Area Number |
21720027
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
近藤 智彦 Akita University, 教育文化学部, 講師 (30422380)
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Keywords | 思想史 / 西洋古典 / 哲学 / 倫理学 |
Research Abstract |
本研究は、ヘレニズム・ローマ期にはじめて主題的に論じられ、その後の西洋思想にも大きな影響を与えた運命と自由意志の問題について、これまでの研究成果を踏まえつつ多角的に検討した上で、その全体像と哲学的・哲学史的意義の解明を目指すものである。本年度はその1年目として、個別的な研究と未邦訳文献の翻訳を進め、その成果を順次発表した。まずストア派に関しては、ストア派の「運命」概念が主に初期アカデメイア派とエピクロス派から影響を受けて形成された可能性を示し、その成果を論文「ストア派の「運命」概念の起源を辿る」としてまとめた。新プラトン主義に関しては、運命と自由意志の問題をめぐる新プラトン主義とストア派の間の影響関係や異同を、プロクロスの議論を出発点として詳細に検討した論文「ストア哲学と新プラトン主義の間-プロクロス『摂理について』から-」を発表した。また、その重要な資料となるプロクロス『摂理、運命と自由について』の日本語訳・訳注を、田子多津子氏と共同でまとめ、その前半部を学会誌に投稿した。ストア派の議論の哲学的・哲学史的意義の解明に関わる研究としては、自由意志と目的論の問題に対するストア派とスピノザの両者の立場を和解させる解釈の可能性を探り、その成果を講演「自由意志と目的論の帰趨-ストア哲学のスピノザ的解釈の可能性」の中で発表した(本講演の内容に基づく論文が近日中に発表される予定)。また、自由意志問題をめぐる学会討議で「ストア派の三つの顔」と題する提題を行い、ストア派の立場を現代的な問題関心と絡めつつ論じ、その両立論の与える示唆が現代でもなお有効であることを明らかにした(その後の再検討を踏まえて論点を整理した報告が近日中に発表される予定)。
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