2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720031
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
井口 由布 Ritsumeikan Asia Pacific University, アジア太平洋学部, 准教授 (80412815)
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Keywords | 思想史 / マレーシア / 国民 / アイデンティテイ / ナショナリズム / 折衝 |
Research Abstract |
本研究の全体構想は、「マレー」「マラヤ」「マレーシア」などにかんする諸思想を18世紀末から現代まで歴史的にたどることによって、マレーシアにおける国民的なアイデンティティの形成がどのようになされてきたのかを思想史的に明らかにするものである。報告者は、博士論文においてこの研究を行ったが、現在のマレーシアという国民国家へ収斂していく方向での諸思想の検討が主であった。本研究では、インドネシアやフィリピンとの合同をも視野にいれた「マレー世界」や「大マラヤ」構想など、植民地宗主国の構想を超えた現地の側からのさまざまな思想が、対立や合意をしながら形成されていくありようを検討する。すなわち本研究は近代マレー思想の諸潮流を折衝と構築という観点から検討することを目的とする。本研究は以下の8つの要素から成り立っている。ア)先行研究の検討と再検討、イ)方法論に関する探究、ウ)カウム・ムダ、エ)マレー人左派、オ)マレー人保守、カ)イギリス等による構想、キ)非マレー系住民の動向、ク)近代インドネシアにおける思想形成。21年度は、東南アジアにかんする学会や研究報告会だけでなく思想史の方法論にかかわる研究会に出席し、最新の研究動向をさぐった。先行研究や方法論の検討をすることで、研究全体の位置づけを確かめた(ア、イ)。またマレーシア出張において現地側の資料を収集し(ウ、エ、オ)、マレー人左派の思想について検討を開始したエ)。21年度の研究活動をとおして、これまでわたしの研究のなかで空白になっていた日本占領時代についても言及する必要があることもわかった。
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