2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720031
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
井口 由布 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (80412815)
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Keywords | 思想史 / マレーシア / マレー / 国民 / アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究の全体構想は、「マレー」「マラヤ」「マレーシア」などにかんする諸思想を18世紀末から現代まで歴史的にたどることによって、マレーシアにおける国民的なアイデンティティの形成がどのようになされてきたのかを思想史的に明らかにするものである。申請者は、博士論文においてこの研究を行ったが、現在のマレーシアという国民国家へ収斂していく方向での諸思想の検討が主であった。本研究では、インドネシアやフィリピンとの合同をも視野にいれた「マレー世界」や「大マラヤ」構想など、植民地宗主国の構想を超えた現地の側からのさまざまな思想が、対立や合意をしながら形成されていくありようを検討する。すなわち本研究は近代マレー思想の諸潮流を折衝と構築という観点から検討することを目的とする。今回着目するのは、20世紀半ばにおける現地の側のつぎの三つの諸思潮である。1)カウム・ムダ:マレー語で「若いグループ」という意味のグループで、「古いグループ」がイスラームを堕落させていると批判して、イスラームをとおして世界を変革することをめざした。2)マレー人左派:インドネシアの民族主義運動に影響されたグループで、インドネシアとの合同を考えていた。3)マレー人保守:マレー人保守層は、イギリスの植民地行政区を継承するかたちで「マレー」にかんする構想をしたとされる。22年度は、21年度に収集した文献の検討をおこない、いくつかの成果発表を開始した。具体的にはマレー人左派の思想、マレー人保守層の思想を再検討の開始し、イギリス等による構想、非マレー系住民の動向にかんする資料を収集した。これまでの研究成果については4月中旬に大阪大学において報告を行った(平成22年4月17日)。また、これとイギリスによる構想とを合同した論文をRitsumeikan International Affairsに投稿し、2011年第9号に掲載された(The Formation of Social Sciences in Malaysia)。
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