2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720031
|
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
井口 由布 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (80412815)
|
Keywords | 思想史 / マレーシア / 国民 / アイデンティティ / ナショナリズム / 折衝 / マレー |
Research Abstract |
本研究の全体構想は、「マレー」「マラヤ」「マレーシア」などにかんする諸思想を18世紀末から現代まで歴史的にたどることによって、マレーシアにおける国民的なアイデンティティの形成がどのようになされてきたのかを思想史的に明らかにするものである。報告者は、博士論文においてこの研究を行ったが、現在のマレーシアという国民国家へ収斂していく方向での諸思想の検討が主であった。本研究では、インドネシアやフィリピンとの合同をも視野にいれた「マレー世界」や「大マラヤ」構想など、植民地宗主国の構想を超えた現地の側からのさまざまな思想が、対立や合意をしながら形成されていくありようを検討する。すなわち本研究は近代マレー思想の諸潮流を折衝と構築という観点から検討することを目的としている。本研究は以下の8つの要素から成り立っている。ア)先行研究の検討と再検討、イ)方法論に関する探究、ウ)カウム・ムダ、エ)マレー人左派、オ)マレー人保守、カ)イギリス等による構想、キ)非マレー系住民の動向、ク)近代インドネシアにおける思想形成。論文の中心的な課題となるのはエ)、オ)、カ)である。これまでにオ)とカ)について論文を執筆した。カ)にかんしてはすでに掲載されているもの(「マラヤ大学医学部設立計画にみる医学的な知の制度化-国民・ジェンダー・エスニシティ-)と投稿中のものがある("Nation Building and the Establishment of a University in Colonial and Posto-Colonial Malaysia")。オ)については国際学会で発表を行い、学会誌に論文を投稿中である("Otherness in the National Canon:(De)constructing the Father of the Malay Language")。現在、エ)の課題についての発表と論文を準備中である。
|