2011 Fiscal Year Annual Research Report
J.McN.ホイッスラーの日本における受容とその影響の広がり
Project/Area Number |
21720032
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小野 文子 信州大学, 教育学部, 准教授 (10377616)
|
Keywords | ホイッスラー / ジャポニスム / 文芸運動 / 異文化交流 / 異国情調 |
Research Abstract |
23年度は、21年度および22年度に収集した文献を精査することで、日本におけるホイッスラーの紹介と受容について検討した。特に今年度は、海外での研究者との意見交換やシンポジウムでの発表を積極的に行った。欧米でのホイッスラー研究は、様々な角度から行われて細分化されているが、本研究のテーマであるホイッスラー芸術の日本への波及については極めて新しい知見であり、シンポジウムにおいても評価された。 本研究はホイッスラーが日本美術から影響を受けたことが出発点となっており、画家のジャポニスムが近代日本の西欧化の中でどのように捉えられていったのかについて明らかにすることであった。主に南薫造や栗原忠二の他、下村観山、小林清親などに注目しており、文学では北原白秋、蒲原有明、木下杢太郎などを中心とした美術や文芸などの新しい浪漫主義的な耽美派運動のなかでどのように取り入れられたのかについて明らかにしたいという方向性で研究を進めてきた。また、文学と美術の橋渡し役となった石井伯亭や山本鼎などの同人誌に注目してきた。しかし、研究を進めていく中で、明治期における「美術」という言葉の概念と成立の議論の中でホイッスラーの唯美主義が紹介されていることが明らかとなり、一部の画家や作家たちの傾倒にとどまらない新たなホイッスラー像が浮かび上がってきた。 以上のことを国際シンポジウムで発表し、海外の研究者との意見交換を行うことは、日本でしか行うことのできないホイッスラー研究の意義を発信することができたと考える。今後海外の研究者とも協力しながら、さらに研究を発展させていきたいと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでおり、海外においても口頭発表を行った。その一部は本年度アメリカで刊行される予定になっており、評価を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、研究の最終年度であることから、過去3年間の研究の成果を総括行うとともに、次の研究課題を明らかにしていく。研究の総括としては、これまで個々の事例についてJ.McN.ホイッスラーの日本における紹介と受容を分析したが、これまでに収集した記事や掲載図版の傾向を総合的に分析し、結果としてホイッスラーの作品や芸術論が日本に何をもたらしたのかについて考察する。また、本研究を今後発展させていくために、これまでの研究から明らかになった事項について、資料を確認しつつ、新たな方向性を見出していく。
|
-
-
-
[Presentation] Whistler and Japonisme2011
Author(s)
Ayako Ono
Organizer
Imagining Japan : Anglo-Japanese Influences on the 19^<th> century British Art and Design
Place of Presentation
Victoria & Albert Museum, London(招待講演)
Year and Date
2011-06-25
-