2011 Fiscal Year Annual Research Report
写真と歴史のアクチュアリティ研究――アメリカ現代写真におけるデモクラシーの価値
Project/Area Number |
21720033
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
日高 優 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (70404910)
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Keywords | 写真 / アクチュアリティ / デモクラシー / 歴史 / アメリカ / メディア / 表象 / 映像文化 |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たる平成23年度は、当初の研究計画に基づき、初年度で構築した仮説的な理論のフレームワークを再点検し、総括となる研究を遂行した。具体的成果としては、仮説の最終的な検証に加え、写真と歴史のアクチュアリティが交錯して立ち現われるモメントを探る本研究全体を総括し、写真イメージにおける傷、痛みをとりわけ重要なキー概念として発見し、新たに抽出することができた。この新たに発見した概念については、本年度に遂行した研究内において、アメリカ社会に転換期に写真の本質にかかわる重要な仕事をした同時代の二人、写真家ゲイリー・ウィノグランドとポップ・アーティストのアンディ・ウォーホルの仕事を中心に分析することによって検討することができた。両者の仕事はともにアメリカの1960年代というターニング・ポイントの歴史的位置において写真メディアと痛みの問題を結晶化させており、本研究の課題にもっともふさわしい写真イメージの事例として選定した。まず、両者を対比する作業によって、写真メディアと痛みの問題系を整理する作業をおこない、一部を成果発表した(口頭発表「先回りするイメージ-ウォーホルとウィノグランドの60年代アメリカ」)。次いで、この作業を通してウォーホル作品には写真のアクチュアリティと痛み、傷の結節点がよりクリアかつ直接的に析出していることが明らかとなったことを受けて、この点に集中してアクチュアリティの問題を考察し成果を発表した。テクノロジー・メディアが一層発達しイメージが乱舞する時代へと加速度的に突入していく歴史の展開のアクチュアリティを掴まえたひとつの極としてアンディ・ウォーホル作品を掴まえ、最適な事例で本研究を通じて得た新しい視座を考察することができた(その成果は、論文「The Experience of Pain through an Image : On Human and Inhuman Elements Present in the Works of Andy Warhol」など)。
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