2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720040
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Research Institution | Idemitsu Museum of Arts |
Principal Investigator |
廣海 伸彦 Idemitsu Museum of Arts, 学芸課, 学芸員 (10518393)
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Keywords | 美術史 / 表象文化論 / 近世史 / 近世文学 |
Research Abstract |
岩佐又兵衛とその工房による絵画制作は、京・越前・江戸という3つの地域で展開され、そのまま3つの作画期にも対応している。それぞれの拠点と時期に応じてどの程度の規模の工房が組織され、また、どのような作画体制が整備されていたかを考えることは、いまだ不明な点の多い又兵衛の画業を明らかにするために必要なことだろう。この研究では、又兵衛の特徴を示す作品の様式分析、特徴の抽出とその分類という、美術史学の最もオーソドクスな手法によって工房制作の実態に迫ることを目指す。2ケ年のうち、初年度に当たる平成21年度は、又兵衛の落款をそなえる作例を中心に、作品調査を実施した。落款のある作品にも複数の画家の様式が混じること自体注意を要する事柄だが、それでも画題の選択や構図の作成などに又兵衛本人の何らかの関与を認めた上で、狭義の又兵衛様式の特徴を具体的に抽出することを試みた。この作業は、今後に調査を予定している、長大な古浄瑠璃絵巻群(MOA美術館所ほか蔵)をはじめとする多くの無落款作品との様式比較に際し、一定の基準点を設定することを意図してもいる。実際の調査は、越前在住期に描かれたと考えられる「金谷屏風」や「樽屋屏風」の数図(いまは掛幅に改装され諸機関に分蔵)、また、印章をともなう歌仙絵におよんだ。米国ではサンフランシスコ・アジア美術館に所蔵される「王昭君図」(もと「樽屋屏風」)の精察と写真撮影を許され、また、メトロポリタン美術館では、従来所在を把握することができずにいた「道蘊」印を有する歌仙絵の実見とデータ収集の機会にも恵まれた。なお、当初予定していたいくつかの重要な作品調査に関しては、諸般の事情によって平成22年度へと持ち越した。
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