2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720040
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Research Institution | 公益財団法人出光美術館 |
Principal Investigator |
廣海 伸彦 公益財団法人出光美術館, 学芸課, 学芸員 (10518393)
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Keywords | 岩佐又兵衛 / 工房制作 / 古浄瑠璃絵巻群 / 大和絵 / 源氏絵 / 歌仙絵 |
Research Abstract |
この研究は、岩佐又兵衛(1578-1650)が手がけた絵画作品の様式分析から、彼の作画活動の実態を実作例の観察によって解明することを主眼とするものである。 2ヶ年の最終年度にあたる本年度は、おおよそ以下のふたつの内容によって研究を計画した。 ひとつは、又兵衛とその工房が制作した作品の実地調査を継続すること。とりわけ本年度は、又兵衛の印章をともなわない絵画作品が調査の対象とした。具体的な作例として、<古浄瑠璃絵巻群>と総称されるいくつかの絵巻作品と源氏絵や伊勢絵、歌仙絵といった大和絵主題の絵画、および当世風俗に題材を得た絵画が念頭に置かれた。調査はおおむね計画通りに進み、国内の所蔵機関(者)、のべ8ヶ所・計65作品に及んだ。その中には、これまで存在を知られなかった作品の調査も2点含まれる。 ふたつめは、2年間の実地調査によって蓄積されたデータの分類と総括である。研究成果の報告は、3篇の論文と1件の口頭発表によって行なわれる計画であったが、論文の刊行はすべて次年度に持ち越されることとなった。近日中に成稿を予定している論文では、又兵衛の工房制作の実態を究明するためのひとつの事例研究として、歌仙絵と源氏絵を取り上げている。また、口頭発表「岩佐又兵衛の《奇想》--金谷屏風における模倣性と創造性について」では、又兵衛の画業において比較的初期作と目される金谷屏風の数図を対象に、中国・明末版本からの図様摂取の様相を報告し、又兵衛の作画方法について新見解を打ち出している。
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