2009 Fiscal Year Annual Research Report
南都系仏教絵画における図像の解析と再構成に関する研究
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21720043
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Research Institution | The Museum Yamatobunkakan |
Principal Investigator |
古川 攝一 The Museum Yamatobunkakan, 学芸部, 部員 (70463297)
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Keywords | 美術史 / 中世史 / 南都 / 仏教絵画 / 図像 / 寧波 |
Research Abstract |
本研究は中世仏教絵画における図像の持つ意味や機能について、学僧や貴族といった個人の造像という観点から考察するものである。特に南都を中心に制作された、異なる図像源泉を持っ複数の独尊像を再構成した作例をその対象とする。東アジア交流史の中での当該仏画の位置づけをも意識し、南宋から元時代の所謂寧波仏画などにも注意を払いつつ研究を遂行する。 今年度は(1)復興期前後の東大寺における作画活動の実態を知る上で重要な絵画遺例・文献史料の調査、(2)南都仏画に影響を与えた寧波仏画を中心とする基礎的な研究、を行った。 前者に関するものでは、「華厳五十五所絵」のうち、根津美術館に所蔵される額装6面を調査した。同絵画に認められる、流麗な描線や譜謔味あふれる表情は、同時期の図像集と共通する要素であり、学侶と図像家の協働による作画活動の一端を示すものと考える(『美のたより』170号)。文献史料では神奈川県立金沢文庫に保管される、「称名寺聖教」所収の尊勝院弁暁に関わる唱導資料の調査を行った。資料の状態を考慮し、マイクロフィルムによる閲覧を行った。 後者に関するものでは、寧波を中心とした仏教文化が南都文化圏における造像に与えた影響の考察を主眼に、南都文化圏での造像に関与した僧侶たちと関係ある聖跡、近年注目を集める寧波仏画の場を中心に、実地調査を行った。また、「観経序分義変相図(王宮曼茶羅図)」(大恩寺蔵)、「法華経変相図(序品)」(覚城院蔵)、「法華経変相図(勧発品)」(道隆寺蔵)、「宇宙図」(個人蔵)、「天界図」(個人蔵)、「聖者伝図」(個人蔵)など、元時代に描かれた寧波仏画の諸作例を調査し、図像や表現の分析を行った。この中にはマニ教の世界観を表現した遺例があり、仏画と共通の表現技法で表されたこれらの絵画の分析は、図像の変容や伝播を考察する重要な契機となった(『大和文華』121号)。
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Research Products
(1 results)