2009 Fiscal Year Annual Research Report
二重帝国における音楽のナショナリズムと民族誌研究―ハンガリーの事例を中心に
Project/Area Number |
21720044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 峰夫 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (00533952)
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Keywords | ロマ / ナショナリズム / 民族誌 / 民謠 / 民族楽器 / ハンガリー / ツィンバロム / バルトーク |
Research Abstract |
平成21年度はツィンバロムの「改良」・ツィンバロム教育の制度化について重点的に調べた。ハンガリーに二度出張し、セーチェーニ国立図書館、ハンガリー科学アカデミー音楽学研究所、リスト記念博物館、リスト音楽院図書館(および書類保管所)、ブダペスト市公文書館などを訪れ、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのブダペストにおけるツィンバロム受容について、多くの一次資料を集めることができた。さらに、ロマの音楽文化に詳しいハンガリー人研究者と情報交換を行った結果として、ハンガリー国外ではあまり知られていない二次文献も入手できた。残念ながら平成21年度中に成果をまとめるには至らなかったが、平成22年度にはこれらの資料をもとに、積極的に学会発表や論文投稿を行いたい。 また、ツィンバロム研究と並行するかたちで、バルトークの民謡採集においてフォノグラフが果たした役割についても、申請者は学会で研究発表を行った。一民謡研究者(バルトーク)のケースに特化するかたちではあったものの、「科学的」な民謡研究の近代的設備がナショナルな文化アイデンティティの確立にとっていかに重要な意味を持っていたかを、同時代の比較音楽学の動向との関わりの中から示すことをそこでは試みた。この発表から得られた知見をもとに、ハンガリー民族誌研究の動向全体へと議論の対象をさらに広げ、ゆくゆくはツィンバロムをはじめとする「民族楽器」の問題圏へと接続することを申請者は考えている。
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