2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス第四共和政期(1946-58年)パリにおける音楽活動状況の検証
Project/Area Number |
21720047
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田崎 直美 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 研究員 (70401594)
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Keywords | 音楽 / フランス / パリ / 第四共和政 / 文化政策 / 20世紀 / 記憶 / ラジオ |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランス第四共和政期(1946-1958年)パリにおける芸術音楽活動状況を「被占領からの解放」という政治的・社会的観点から検証し、文化活動を通した戦争(被占領)の記憶形成のメカニズムを解明する手掛かりを得ることである。 行政の音楽政策の検証およびその影響を考察するために、情報省管轄下のフランスラジオ局Radiodiffusion Francaise (RDF)の音楽部門を対象としたうえで、本年度は共和国臨時政府時代(1944-46年)の組織、芸術音楽番組内容とその方針に関連した資料を更に収集し、人民戦線内閣期(1936-38年)から戦後にかけてのラジオ音楽政策の流れを重点的に整理した。その結果、 ・RDFは独自の調査からラジオで音楽を聴く人の大多数が「偶発的」聴衆であることを意識した上で、聴衆に集中力の持続を要求することない短い放送時間で昼食休憩時間帯に自国文化(フランス音楽)の理解促進を目指す番組を放送するなどの「大衆啓蒙」を試みていたこと、 ・RDF音楽部門責任者の多くが旧レジスタンスに加担した芸術家で占められたにもかかわらず、いずれの番組においても偏ったフランス音楽擁護はせず、他国籍(ドイツを含む)の音楽紹介も同程度に行うなど国際協調への配慮がなされたこと、 ・RDFはラジオ放送による若手音楽家促進を意識した上で、1948年のRDF芸術部門改革(高度に芸術的なプログラム用および娯楽用という形で専門化された2つの放送網の確立)の下地を準備したこと、 が戦後復興期当時の特徴として明らかになった。同時に当時の音楽家たちはRDFへ「国家メセナ」としての役割を期待し、時に音楽家労働組合も巻き込む問題へと発展した様子も、RDF関連史料より浮かび上がってきた。
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Research Products
(4 results)