2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス第四共和政期(1946-58年)パリにおける音楽活動状況の検証
Project/Area Number |
21720047
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田崎 直美 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 研究院研究員 (70401594)
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Keywords | 音楽 / フランス / パリ / 第四共和政 / 文化政策 / 20世紀 / 記憶 / ラジオ |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランス第四共和政期(1946-1958年)パリにおける芸術音楽活動状況を政治的・社会的観点から検証し、「被占領からの解放」の記憶形成のメカニズムを解明する手掛かりを得ることである。 本年度は引き続き「行政の音楽政策の検証とその影響の考察」のために、当時唯一の国営フランス・ラジオ局Radiodiffusion Francaiseの音楽部門を対象とし、共和国臨時政府時代(1944-46年)以降1954年(アルジェリア戦争、テレビの計画的発達開始)までのラジオ芸術音楽番組方針に関する史料収集を行ない、ラジオ音楽政策の変遷を考察した。その結果、この時期は組織改編や予算の見直し、内閣介入の有無にかかわらず、(1)視聴率に関係なくフランス文化擁護番組を制作・維持、(2)国民の大衆文化に配慮しつつも、それに抵抗する国民教育の方針、は揺らがなかったことが判明した。音楽部門では、(3)国会の政治情勢とは異なり、作家や制作者の政治信条による排除は行なわれなかったこと、(4)商業録音よりオリジナル制作が優先されたこと、も判明した。 また「復興期における音楽家の態度」の一考察として、ラジオ局音楽部門監督であり作曲家であるバロー(BARRAUD,Henry)が欧州で初めて設立したフランス・ラジオ放送児童合唱団「メトリーズ」la Maitriseを対象として、設立直後(1945-49)の活動内容と意義について調査・考察を行なった。その結果、(1)一般の学童を教育の力で音楽-学業ともに優秀に育成した点が高く評価されたこと、(2)曲目は「ドイツ・ロマン主義偏重レパートリーからの脱却」、「18世紀以前の音楽の再評価によるフランス文化再生」というバロー個人の理念が反映された一方で、国籍や時代などで過度な排他性はみられずバランスが考慮されたこと、(3)児童合唱に要求された音楽的技術は広範囲かつ高度であること、が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに国立視聴覚研究所にて重要な先行研究および聴覚資料を、フランス公文書館にてフランス・ラジオ局の運営、方針、番組表を、調査することができた。そのため、知られていなかった当時の芸術音楽活動状況を、パリを拠点とするラジオ放送という分野において、政治的・社会的視点から解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
「行政の音楽政策の検証とその影響の考察」については、現段階では主として1954年までのフランス・ラジオ局の音楽方針情報が収集されている。今後は第四共和政期全体に研究対象時期を広げ、変遷を調査するとともに、第五共和政期の文化方針との関係を考察する上での必要となる情報の収集を行なう。「復興期における音楽家の態度」および「戦争(解放)の記憶」に関しては、自国文化の保護を使命に掲げたのナショナル・チャンネルの音楽番組およびフランス国営ラジオ放送楽団の上演記録を今後収集し、考察する。
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Research Products
(2 results)