2010 Fiscal Year Annual Research Report
『移民文学』としての『不条理演劇』-サミュエル・ベケットの越境と劇作の関係
Project/Area Number |
21720057
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川島 健 広島大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (60409729)
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Keywords | 文学 / 演劇 |
Research Abstract |
本年度は不条理演劇作家が劇作家としての名声を確立した後の活動に注目した。彼らが巻きこまれた交流や論争に注目し、その言説を分析する。越境、亡命によって特徴づけられる不条理演劇だが、第二次世界大戦後はその活動はより内向きになり、「国家」という枠組みを模索するようになる。このような前提とおいて今年度特に注目したのは、戦後イギリスでの不条理演劇作家の活動である。またハロルド・ピンターのロンドン労働者階級の表象も分析した。この成果は本年度の口頭発表2件である。ピンターが政治的態度を示すのは80年代後半からだと思われているが、すでに60年代の作品にその傾向が顕著であることを明らかにした。これら2件の発表は来年度に論文として出版することを目指す。また8月にはアメリカのボストン・カレッジ(ジョン・J・バーンズ図書館)にてサミュエル・ベケットの書簡を閲覧・筆写した。その資料をもとに、ベケットがBBCサードプログラムのために執筆、翻訳したラジオドラマにたいする考えや、彼のイギリス観を分析した。ベケットとイギリスの関係はこれまであまり論じられてこなかったが、この貴重な資料の分析によって、多くのことが明らかになると思われる。成果は23年度に論文として発表される。
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