2010 Fiscal Year Annual Research Report
日露戦争の錦絵と写真―1900年代における戦争の表象―
Project/Area Number |
21720058
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
向後 恵里子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 講師 (80454015)
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Keywords | 芸術諸学 / 美術史 / 表象文化史 / 戦争と文化 / 日本近代史 / 戦争の表象 / 錦絵 / 写真 |
Research Abstract |
本研究は、日露戦争(1904-05年/明治37-38年)に際して作り出された様々な戦争の表象のうち、錦絵と写真に着目して、双方の制作/製作と受容/消費の具体的な様相を調査・考察するものである。この両者を対象として、近世から続く錦絵と、近代に新しく展開した写真(製版)、この二つのメディアにおいて、戦争の表象が交代してゆく経緯の把握につとめた。今年度は以下の方針にしたがい、調査の補遺およびデータベースの構築作業を継続しつつ、対象の分析・考察に重点をおいて研究を遂行した。 1.錦絵 昨年度から引続き、作品調査とデータベース作成を進めた。調査の過程では、錦絵を発行していた版元、またそれを店頭に掲げ、売買する店であった絵草紙屋についての資料も収集し、これらの錦絵の存在を可能にした"場"がどのように変容していったか、そこに集う人々の振る舞いの変化、また精神や趣味の変貌を明らかにするようつとめた。 2.写真 日露戦争における写真の生産・流通の状況について調査をすすめた。昨年度の調査の不足を補ったほか、従軍写真班の実態についてはより詳細な調査を行った。さらに、写真そのもののみならず、こうした「写真」という言葉をめぐるまなざしについても調査を及ぼした。 3.分析・考察 錦絵と写真には、いったい「何が・どのように」表象されていたのかという問いに答えるために、その受容をめぐる視点もふまえながら、考察をすすめた。錦絵と写真双方の比較分析のほか、他の戦争-西南戦争から第一次大戦まで-との比較、また日露戦争時の他のメディア出版状況との比較もすすめた。 これらの調査結果に基づく考察は、今後学術論文として発表し、また博士論文へ反映する予定である。
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Research Products
(2 results)