2010 Fiscal Year Annual Research Report
前近代日本における文化財保護史-宗教施設と庇護精神に注目して
Project/Area Number |
21720065
|
Research Institution | 大阪市文化財協会 |
Principal Investigator |
内藤 直子 財団法人大阪市博物館協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (70270725)
|
Keywords | 文化財保護 / 社寺宝物 |
Research Abstract |
今年度は、地元大阪の有力社寺である大阪天満宮と誉田八幡宮の文書調査を行った。 大阪天満宮では、前近代の資料として今回の研究に直結するような知見は得られなかったが、明治24年付けの「社寺宝物取扱方考案」の存在を発見、調査を行い、全頁の画像撮影と通読を実施した。執筆者は不明ながら、記された内容から全国宝物取調局に通じた人物の手によることは明らかで、明治24年に至るまでの宝物調査の動向、またその間に宝物が散逸した6項目の理由と、それを防ぐための宝物取扱方法について15条の提言が記されたもので、国立博物館での宝物の買い取りや展示についての比較的生々しい詳細も記されており、今後、より多くの活用を想定し、今後全文の資料紹介を行う方向で調整中である。また誉田八幡宮の調査については、文書の中で宝物に関する文書をピックアップし、内容の検討を行った。宝物目録類については、同社の神宮寺である長野山護国寺の宝蔵で年預の立ち会いの下まとめられたもので、奉行所に当てて作成されている。重要な文書は複数の年預の署名があり、複数のチェック体制のもとで確認作業を行うことで、宝物の不正流出を防ぐ効果があったものと思量される。また開帳については、年不詳ながら、「開帳御免許願」により、諸国勧化のために行いたい旨、奉行所に願い出ている記録も確認され、さらにこれに関し、「開帳中宝物取扱」という文書により、大事に宝物を取り扱うこと、また暮七つになったら櫃に入れて封印すること、といった開帳に当たっての諸注意が行われており、散逸を防ぐための工夫努力が、年預を中心とした15宇あったと伝えられる各寺の相互努力によって維持されていた様子をおぼろげながら認めることができた。
|