2011 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代の養生論の現代的意義に関する研究-国学者の養生論における養生と教養の関係
Project/Area Number |
21720066
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
趙 菁 金沢大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (50345641)
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Keywords | 養生論 / 鈴木朖 / 養生要論 / 人間形成 / 廻村教諭 |
Research Abstract |
国内外において、江戸時代の儒者、蘭学者、医師の養生論については多数論じられているが、国学者の養生論に関する考察、さらには教育と養生論のかかわりに関する研究は見当たらない。本研究は、総合的な養生論研究への方法論を提起するとともに、養生論研究の現代的意義を明確にするものである。平成23年度に行われた研究は以下の通り。(1)鈴木朖の『続養生要論』の後半の翻刻に努めた。漢字のくずし方に独自の決まりがある朖の文章を活字にするのは困難な作業であるが、現在は全文の翻刻を完成した。(2)『養生要論』と『続養生要論』の読者層の分析、他の養生書との比較対照を行った。(1)『養生要論』『続養生要論』の読者層について、弟子、推進者のみならず、歌友の存在も明らかにした。(2)『養生要論』『続養生要論』とその書肆、貸本屋(大野屋惣八)とのかかわりを分析した。(3)他の養生書との比較検討については、貝原益軒『養生訓』のみならず、従来指摘されていない曲直瀬道三『道三翁養生物語』、田中雅楽郎『田子養生訣』との関連を明らかにした。(3)『養生要論』と『続養生要論』の内容分析において、「養生の肝要は貧窮下賤の身のうへに倣にあり」をキーワードに、朖の養生論に示される学問観・教育観を析出し、人間形成における朖の養生観の思想的本質を解明した。(4)朖の養生論と江戸後期の教育現場とのかかわりについて、特に明倫堂教授の廻村教諭に注目し、庶民教育における朖の養生論の役割を分析した。その中で、さらに廻村教諭の推進者である庄屋たちの考えと朖の考えの相違点を取り上げ、両者の比較を行った。(5)論文の作成・投稿平成23年度は『続養生要論』の後半の翻刻を『言語文化論叢』第16号に投稿した。また、文芸誌『大地』(48号)に「江戸の健康観から学ぶもの-「不憂不懼」と「厠」-国学者の養生論」を投稿した。そして、第29回鈴屋学会大会研究発表において「鈴木腺の養生観-「貧窮下賎の身のうへに倣にあり」の視角から-」をテーマに発表した。
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