2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期アテネ・フランセにおける文化的ネットワークとコミュニティの研究
Project/Area Number |
21720078
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
宮澤 隆義 早稲田大学, 文学学術院, 講師 (70454006)
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Keywords | 日本文学 / 仏文学 / 教育社会学 |
Research Abstract |
本年度は戦前期のアテネ・フランセに関わった人物の中でも、小説家である坂口安吾(1906~1955)を中心に、アテネ・フランセの教育と坂口安吾がそこで属していた文学サークル、そしてその間での交友関係の調査を行った。彼らの間で同人誌『言葉』が刊行され、それは岩波書店から出る事になった『青い馬』へと引き継がれてゆくが、その中から安吾と友人であり詩人の菱山修三との間でのヴァレリーに関する受容が行われている。今年度執筆し早稲田大学に提出した博士論文の中でそのことについて論述した。安吾のフランス文学受容はこのコミュニティを中心になされており、翻訳家の江口清らの影響の他、中原中也らとの交流がこのコミュニティを経由して生まれている。これらの交流は、大学制度や文壇史のみを中心とした文学史からは見えてこないものであるが、こういった関係性の形成から、昭和期のみならず現行の大学制度の持つ問題をも逆照射することまで視野に入れつつ、大学論や学問論に関する調査も行っている。 そのような視点から、今年度は東京帝国大学の大学制度における語学教育、そしてそこにおけるフランス文学の位置づけの調査も行った。この件に関してはいまだ資料捜索中であり、今後に継続して調査を行う予定である。また軍事的な面からも、ドイツ語が中心であったところにフランス語が入ってくる時代でもあり、その経緯からアテネ・フランセに軍人たちが通い出していることもわかってきた。この点についても、戦前の国際関係も視野に含めた上で調査を継続してゆきたい。
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