2010 Fiscal Year Annual Research Report
活字活版印刷文化における文学の視覚性と身体性 ―萩原恭次郎と岡田龍夫を中心に―
Project/Area Number |
21720081
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
村田 裕和 立命館大学, 文学部, 助教 (10449530)
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Keywords | 萩原恭次郎 / 前衛芸術運動 / アナキズム / プロレタリア / アヴァンギャルド / タイポグラフィ / 能勢克男 / 活字活版印刷 |
Research Abstract |
本年度は、文献資料の調査・収集をおこなうと同時に、前年度末に開催したシンポジウム『プロレタリア芸術とアヴァンギャルド』の研究成果論文を取りまとめ、『立命館言語文化研究』22巻3号に論文計8本の特集企画として刊行した。また関連するテーマでの著書を上梓し、上映会を開催した。 資料調査では、国立国会図書館、日本近代文学館、徳島県立文学書道館において、萩原恭次郎と同時代にプロレタリア文学運動における雑誌メディアの発展に寄与した貴司山治の文献調査および自筆日記の撮影などをおこなった。その成果は2011年1月刊行の『貴司山治全日記DVD版』およびその別冊『貴司山治研究』(不二出版)の一部に反映されている。この研究テーマは、戦前・戦後の新聞小説配信事業や、関西地方における雑誌メディアの系譜、装釘家柳瀬正夢の仕事などと接続しており、さらなる進展のためには、グループで分担をおこなうプロジェクト研究へと発展させる必要がある。なお現在、科研費基盤研究(C)を申請中である。 『立命館言語文化研究』22巻3号所収の論文「首のない体/字面のない活字-印刷術総合運動『死刑宣告』の身体性-」では、活字活版印刷の歴史のなかで、『死刑宣告』のタイポグラフィがいかなる意味を生成したのかを論じた。印刷技術が公的な思想伝達メディアとして絶大な影響力を持った明治~大正時代において、伏せ字はどのようにして発生し、経験されたのか。『死刑宣告』はそうした、印刷技術と身体の葛藤のメタ・クリティークとして成立しているとするのが本論の骨子である。 本年度は、他に本研究課題の前時代を対象とする著書『近代思想社と大正期ナショナリズムの時代』を刊行し、また上映会・ワークショップ「能勢克男全作品」を開催した(立命館大学・2010年12月5日)。
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Research Products
(4 results)