2011 Fiscal Year Annual Research Report
占領期日本におけるGHQ日本民主化政策と翻訳許可アメリカ図書
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21720088
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 紀子 大妻女子大学, 文学部, 助教 (40522123)
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Keywords | 占領 / 日本民主化 / 西部言説 / 西部文学 / メディア(西部劇) / 文化解釈 / 文化政策 / 冷戦 |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、GHQが戦後占領下日本の民主化政策過程において、アメリカ文学の中でも「西部文学」に特別な関心を払っていたことが明らかとなった。GHQおよびアメリカ政府が日本にアメリカ式民主主義を移植するにあたり、西部フロンティア言説に基づいた西部のイメージが、その政治思想を適切に反映していると考えられたためである。 本年度は、上記の内容をまとめた論文を更に発展させ、冷戦というより広い枠組みへと研究の射程を広げた。これによる成果は大きく二点ある。一点目は、西部言説に基づくGHQの日本へのアメリカ的価値観の移植は、占領終了1952年までの短期的なものではなく、実は1930年代から長期にわたるアメリカの対ソ連政策の一部であったという新しい側面が見えてきた点である。これにより、二点目の効果として、西部言説は日米間のみならず、アメリカ、日本、アジア、ソ連という巨大な国際的空間に流通された言説として浮上し、西部言説が持つトランス・ナショナル性は大幅にその範囲を拡大することになる。これは、当初筆者の念頭にあった戦後日米関係を枠とした思想体系を想定以上に拡大するものであり、更なる発見の可能性が拓けたと言える。冷戦を視野に入れたこの研究論文は、本年度内に論文集として出版予定であったが、震災の影響等により大幅に遅れ、来年度初夏頃に出版予定である。 本年度の研究では更に、文学以外のメディア-映画-にも調査範囲を拡大した。西部と日本の民主化という議論には、西部劇というメディアの存在が欠かせない。西部劇を調査対象に組み入れたことにより、日本民主化および冷戦と西部の関係性がより濃密さを増して現れてきたように思われる。それは西部劇が冷戦と密接に結びついているためである。アメリカの価値観を映すソフトパワーとしての西部劇・西部文学の関係性と、そのソフト・パワーを受容する日本人の文化的解釈の間にはどのような関係があるか、その関係性は日本の戦後にどう影響したのか、引き続き研究を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(3)の理由は、主として2点ある。1)前勤務大学の勤務状況により、国内外調査に赴くことが予想以上に困難となり、一次資料が期待通りに収集できなかった。但し、二次資料調査は順調である。2)今年度新採として現勤務校に異動となり、初年度であったことから生活が大きく変化した事に加え多忙を極め、自己の研究調査に割く時間が大幅に制限された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究時間の確保が最大の問題点である。新採初年度であった本年度の状況は特異な状況であったために改善が困難であったが、次年度は自己の研究時間確保に向け、時間配分を見直し改善を加える。 確実な研究成果を挙げるために、9月までに所属学会誌に論文を投稿、年度末の出版化を目標に設定し、着実に研究を実行する動機づけとする。また一次資料不足に対応し、国立国会図書館での調査回数を増やすことに努める。
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