2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアルの視点をふまえた第二次大戦後の英国演劇と「ホーム」の概念の研究
Project/Area Number |
21720098
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
石井 珠子 (増田 珠子) Surugadai University, 経済学部, 准教授 (80383298)
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / イギリス演劇 / 演劇 / 現代演劇 / ポストコロニアル |
Research Abstract |
ポストコロニアルの視点をふまえながら第二次世界大戦後の英国演劇における帰属意識、すなわち「ホーム」の概念とその問題点を検討することが、本研究の目的である。21年度は、ポストコロニアル文学研究の全体像を把握するため、最新の研究動向に配慮しつつ、これまでの研究に関する書籍や資料の収集・整理・検討を行った。また、津田塾大学言語文化研究所のポストコロニアリズムに関するプロジェクトに参加し、他の研究者との意見交換を行うことによって、ポストコロニアル文学研究にかんする知識や情報を得た。このプロジェクトの研究会においてポストコロニアル文学論の文献改題を行ったほか、20世紀の英国を代表する劇作家の一人ノエル・カワードが太平洋上の架空の英領の島を描いた作品を取り上げて、カワードにとって英領植民地とはどのような意味を持っていたか、カワードの帝国意識および帰属意識はどのように評価すべきものであるかを分析する論文を執筆した。この論文は英国演劇における「ホーム」と「アウェイ」の概念の考察の一環として執筆したものであり、現在『津田塾大学言語文化研究所報』に投稿中である。カワードは観客を喜ばせることこそ劇作家の使命と公言してはばからなかった人物であり、作品の上演の状況等を考慮に入れると、彼が作品中に盛り込んだアイディアは当時の演劇の観客の考え方を少なくともある程度反映したものと判断できる。そして、そのアイディアの分析を通して、当時の英国人にとって帰属意識を支えるものは何であるかについて検討する手掛かりが得られる。本研究の最終目的は、カワードより後の世代の劇作家の作品における「ホーム」と「アウェイ」の概念を検討することであるが、第二次世界大戦後の変化の特徴を的確につかむため、21年度はまず第二次世界大戦前後に活躍したカワードについて論文をまとめた。
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