2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアルの視点をふまえた第二次大戦後の英国演劇と「ホーム」の概念の研究
Project/Area Number |
21720098
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
増田 珠子 駿河台大学, 経済学部, 准教授 (80383298)
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / イギリス演劇 / 演劇 / 現代演劇 / ポストコロニアル |
Research Abstract |
ポストコロニアルの視点をふまえながら第二次世界大戦後の英国演劇における帰属意識、すなわち「ホーム」の概念とその問題点を検討することが、本研究の目的である。22年度も21年度に引き続き、ポストコロニアル文学研究の全体像を把握するため、最新の研究動向に配慮しつつ、これまでの研究に関する書籍や資料の収集・整理・検討を行った。また、津田塾大学言語文化研究所のポストコロニアリズムに関するプロジェクトに参加し、ポストコロニアル文学研究にかんする知識や情報を得た。さらに、このプロジェクトの研究会において、ノエル・カワードが20世紀初頭の30年間の英国で起こった有名事件をパノラマ的に描き出した作品『カヴァルケード』を取り上げ、カワードが20世紀初頭の英国における様々な社会の変化をどのような価値観をもって描き出したかを検証し、この芝居の成功がその後のカワードにどのような影響を及ぼしたかを考察する論文を執筆した。この作品は1931年の初演当時、愛国劇として絶大な人気を誇った芝居であり、この成功こそ演劇界のアンファン・テリブルとしてデビューしたカワードが保守的で愛国的な「マスター」へと転換していく契機となったことは明らかである。すなわち、カワードおよび初演時の観客の帰属意識や大英帝国に対する意識を考える上で非常に重要な作品と言える。この論文は英国演劇における「ホーム」と「アウェイ」の概念の考察の一環として執筆したものであり、現在、前述のプロジェクトが出版する予定の論集の一編として刊行の準備を行っている。本研究の最終目的は、カワードより後の世代の劇作家の作品における「ホーム」と「アウェイ」の概念を検討することであるが、第二次世界大戦後の変化の特徴を的確につかむため、22年度も21年度に引き続き第二次世界大戦前後に活躍したカワードについて論文をまとめ、大英帝国に対する英国の人々の意識について考察した。
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Research Products
(1 results)