2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアルの視点をふまえた第二次大戦後の英国演劇と「ホーム」の概念の研究
Project/Area Number |
21720098
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
増田 珠子 駿河台大学, 経済学部, 准教授 (80383298)
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Keywords | 英米文学 / イギリス演劇 / 現代演劇 / 演劇 / ポストコロニアル / ノエル・カワード |
Research Abstract |
本研究の目的は、ポストコロニアルの視点をふまえながら第二次大戦後の英国演劇における帰属意識、すなわち「ホーム」の概念とその問題点を検討することである。「ホーム」の概念はボーダーレス化の進む現在の世界において無視することのできない国家とアイデンティティの問題に直結するものであり、対立する「アウェイ」の概念とともにポストコロニアル文学研究のキーワードの一つである。しかしこれまでポストコロニアリズムと演劇研究が結びつけられる際には、かつての植民地における演劇研究が中心だった。これに対し本研究は、従来英国の劇作家と認知され英国演劇を代表すると見なされてきた劇作家とその作品に着目し、そこに埋め込まれた「ホーム」の概念とその問題点や意義を、ポストコロニアルの問題意識をふまえて分析することを目指している。 上記の目的を達するため、前年度に引き続き、演劇界の「アンファン・テリブル」として注目を集めたのち愛国劇の作者として名を馳せ、第二次世界大戦後には節税目的で英国から海外へ居を移して非難され、さらに晩年は保守的で愛国的な「マスター」となっていったノエル・カワード(1899-1973)に注目し、20世紀の英国が大英帝国から福祉国家へと転換していく過程において愛国心や帰属意識とは何を反映するものだったのかを検討した。この研究の一部は23年度末にポストコロニリズムを扱った論集の一章として発表することができた。さらにこの考察をふまえ、現在の英国を代表する劇作家の一人でありチェコ出身でインドにおいて幼少期を送った後に英国で長じたトム・ストッパード(1937-)の作品にみられる「ホーム」と「アウェイ」の意識の検討に入った。大英帝国を内側から経験したカワードと比較検討することで、旧植民地の側から大英帝国を見た経験を持ち、第二次大戦後の英国で育ったストッパードにおける「ホーム」と「アウェイ」の概念を際立たせることを試みている。
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Research Products
(1 results)