2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720102
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
武田 将明 Hosei University, 文学部, 准教授 (10434177)
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Keywords | 十八世紀 / イギリス文学 / リアリズム / 匿名性 / 作者の位置 |
Research Abstract |
本年度は、研究の基礎となる視点を定めるために、18世紀英国小説におけるリアリズムの問題とその後の近代文学とのつながりを考えた。その成果として、英国小説との比較も含みつつ、現代日本の文学作品におけるリアリズムと物語性との関係を論じた「美しい物語とただの美しさ-『1Q84』と『ヘヴン』を通じてみる世界」(『早稲田文学』3号)が挙げられる。 他方で、本研究の申請時に構想していたイライザ・ヘイウッドの翻訳小説に関する論考を完成させた。近日中に刊行される『十八世紀イギリス文学研究』第4号に掲載される本論文では、これまで十分な考慮の払われてこなかった女性作家の翻訳作品に注目することで、18世紀初頭の英国小説がいかに新しい文体を開発していたかを論じ、ひいては近代リアリズムがどのような散文概念によって支えられてきたかを示した。 原理的に近代リアリズムの問題を考えることで、17世紀から18世紀の英仏で発表された書簡体小説のもつ作者の匿名性の問題を論じる手がかりを得た。現在、近代リアリズムと作者の問題に関する論考を執筆しており、2010年の半ばまでに完成させる予定である。 また、2009年5月30日には、現代の英文学研究の可能性を追求している研究者と共にシンポジウム「コモン・リーダーは復権できるか--文芸批評と作品論」を開催し、私は18世紀文学と小説研究の両方を代表して講演を行った。その他、18世紀文学における重要作品、サミュエル・ジョンソン『イギリス詩人伝』から二番目に長い伝記「ジョン・ドライデン」を訳出するなど、18世紀英国文学を中心に文学関連の執筆活動を精力的に行った。 これに加え、本研究において重要な作品であるスウィフト『ガリヴァー旅行記』を精読する研究会を、大阪大学の服部典之氏、東京女子大の原田範行氏と定期的に開催した。なるべく早く、この共同研究の成果を発表するつもりである。この研究と関連して、2010年3月に一週間ロンドンに滞在し、大英図書館で資料調査を行った。 今年度も科学研究費助成金によって有意義な研究のできたことを感謝したい。
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Research Products
(5 results)