2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭ロシアにおける<新しい人間>の創造と演劇
Project/Area Number |
21720110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 正則 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (10346843)
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Keywords | 外国文学 / ロシア / 文化 / 思想史 / 演劇 |
Research Abstract |
本年度は3年間の研究の2年目にあたる。本年度の研究計画は、昨年度の研究の成果を受け、1900-1910年代のロシアの諸潮流における演劇の実践活動を跡づけ、〈新しい人間〉創造実験の実態を明らかにし、さらに諸潮流間での〈新しい人間〉と演劇とをめぐる相互交流と論争の展開を具体的に追跡し、論争の論点と構図を明確にすることにあった。 本年度はまず、演劇を〈新しい人間〉創造の手段とみなす考えをとりわけ強くうちだした後期象徴主義者イヴァノブとチュルコフをとりあげ、その演劇理論をより詳細に解明するとともに、彼らの独創的な世界観である〈神秘的無政府主義〉との関連を探った。とくに、形而上学的本質世界の直観的・神秘的把握による自己確立の理念と、祝祭的演劇による新しい共同体創造の理念とが、イヴァノブとチュルコフにおいてどのようにして包摂・統合されているのかを、両者の著作を用いて検証した。 次に、〈神秘的無政府主義〉をめぐって象徴主義の内部で展開された激しい論争を、〈新しい人間〉創造手段としての新しい演劇のありかたをめぐる論争という視角から、当時の雑誌を主要な資料として用いて追跡し、論点の整理をおこなった。さらに、昨年度の研究にひきつづいて、後期象徴主義とマルクス主義との演劇理論をめぐる知的交流、類似した理論が共有される過程を、両者が共に参加した論集などを用いて跡づけた。 こうした今年度の研究成果については、昨年度の研究成果で得られた知見もおりまぜつつ、現在論考を準備中である。
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