2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭ロシアにおける<新しい人間>の創造と演劇
Project/Area Number |
21720110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 正則 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (10346843)
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Keywords | 外国文学 / ロシア / 文化 / 思想史 / 演劇 |
Research Abstract |
本年度は3年間の研究の3年目にあたる。本年度の研究計画は、前2年間の研究の成果を受け、演劇の理論と実践の検討により明らかになった知見を、1900-1910年代ロシア文化・思想史の新たな枠組へと組み込み、近代を超克する<新たな世界観>とそれを体現する<新しい人間>の創造の理念とその実現手段をめぐる論争という視角から、20世紀初頭ロシア思想・文化史の再構築・記述を試みることにあった。本年度既に発表済みの研究成果は以下の2点である。 論文佐藤正則「ゲオルギー・チュルコフの<神秘的アナーキズム>」(『言語文化論究』第28号)においては、象徴主義内部のみならずマルクス主義陣営においても大きな議論を呼んだ<神秘的アナーキズム>の世界観と演劇理論を解明することで、神秘的アナーキズムがもたらした論点を明確化し、象徴主義内部での論争、さらに象徴主義とマルクス主義と間の論争を、新たな視点から再検討するための礎を得た。 また、共著書小松久男・塩川伸明・沼野充義(編)『ユーラシア世界越境と変容の場第3巻記憶とユートピァ』(東京大学出版会)(近刊)では、佐藤正則「革命と哲学世紀転換期ロシアにおけるマルクス主義者たちの哲学的模索と論争」を分担執筆し、マルクス主義者を3つのグループに分け、それらの間での世界観をめぐる論争を跡付け、「認識理論」「摩史の必然性と人間の自由」「価値と倫理」という3つの論点を抽出するとともに、思考様式の共通性を明るみにした。これらの論争点は人間の精神性や文化運動(とりわけ演劇)の問題と深く関連している。 このほか、マルクス主義者とりわけボリシェヴィキのプロレタリア演劇理論について、またマルクス主義者と象徴主義者との論争について、より具体的に検討した論考を現在準備中である。
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Research Products
(2 results)