2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720116
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
郷原 佳以 関東学院大学, 文学部, 准教授 (90529687)
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Keywords | ブランショ / 『彼方への一歩』 / 断章 / 言語とイメージ / ドゥギー / ジュネット / 隠喩 / ミニマル・イメージ |
Research Abstract |
モーリス・ブランショの文学論から出発して文学言語とイメージの現代的な関係性を究明するという本研究の目的に沿い、本年度は主として以下の研究を行った。 1)ブランショは、1950年代末から同時代の音楽や絵画等の動向と並行するようにして断章形式に関心を抱くようになった。その意味を探るため、後期ブランショの断章集『彼方への一歩』(1980)における「断片的なもの」をめぐる断章を分析し、そこに見出される問題を初期ブランショの言語論を参照することによって解明した。研究成果はバタイユ・ブランショ研究会で発表し、その原稿に基づいた論文を『関東学院大学文学部紀要』第119号に発表した。 2)前年度にブランショから出発して確認した「星座=共置(constellation)」としての言語の多面体的イメージを検証するために、「共に置くこと」を詩の起源と見做す詩人・批評家ミシェル・ドゥギーの詩学(「commeの詩学」)の分析を開始した。本年度はその解明に向けて、ドゥギーとジュネットとの間で隠喩をめぐって行われた論争をまとめ、争点を明瞭にした。研究成果は『人文科学研究所報』34号に発表した。 3)これまでの研究では、ブランショの評論と虚構作品の双方を精査することにより、言語とイメージの関係性をめぐる独特の思考を抽出してきた。本年度は、文学言語の物質性・形象性、および、統御を逃れるその多面体的性格に注目し、「文学のミニマル・イメージ」という概念によりこれまでの研究をまとめ直し、単著『文学のミニマル・イメージモーリス・ブランショ論』を上梓した。 4)その他、サルトルとブランショのイメージ論の比較分析やブランショのイメージ論によるジュネの小説分析など、ブランショ研究を基礎にした比較・応用研究を行い、他分野との交流を図ると共に、ブランショのイメージ論の射程の広さを検証した。
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Research Products
(8 results)