2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける白居易受容の諸相と日中独自文化の形成に関する研究
Project/Area Number |
21720122
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
陳 羽中 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (50457412)
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Keywords | 中国文学 / 日本旧抄本 / 漢籍史 / 白居易 / 文選 / 印刷史 / 長恨歌序 / 『白氏文集』佚文 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究を踏まえ、[1]日本漢籍受容史に関する資料の整理と研究、[2]『白氏文集』の周辺資料の整理と研究、[3]日本中世の白居易関連資料に関する文献的研究という三つの研究テーマに分けて調査及び研究を行った。具体的には、以下のような研究成果を得られたのである。(1)三善爲康撰『経史歴』を研究し、そこに記されている百部以上の書籍は、いずれも唐末五代時期の刊本であることを明らかにした。さらに、唐末五代期は、東アジアの第一次黄金時期である仮説を提出した。(2)東大資料編纂所蔵古抄本『関東禅林詩文等抄録』を取り上げ、現在懸案になっている金沢文庫の創立時期を明らかにし、さらに、金沢文庫は、当初は幕府の公設文庫として設立したという新説を指摘した。(3)日本の王権史において、漢籍が常に政治運営を支える最も中心的な役割を果たしたことを検証した。(4)東山御文庫藏九条本『文選』巻一に記入されている眉註・行間註に着目し、現在散佚した『集註文選』の巻頭を復元した。(5)入唐僧慧萼に関する日中の文献資料を蒐集し、南禅院本『白氏文集』の日本伝来の経緯及び普陀洛迦開山における日本王室と慧萼が果たした重要な役割を明らかにした。(6)令宗允亮撰『政治要略』に抄録されている「白居易伝」の校勘及び研究を行い、白居易の生卒年、家庭環境、成仏問題、『白氏六帖』の成立時期などの問題に関して、従来の定説に多くの誤りが存在することを明らかにした。(7)日本中世の白居易関連資料の収集と研究し、『白氏文集』の更なる補綴を行った。(8)各蔵書機関に所蔵する旧抄本『長恨歌並序』に対して総合的な研究調査を行った。現在偽作をされてきた「長恨歌序」は、白居易の真作であることを明らかにした。(9)日中各学術機関及び図書機関所蔵する白居易関連の文物、石碑、文献の調査を行った。
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