2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける白居易受容の諸相と日中独自文化の形成に関する研究
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21720122
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
陳 [チュウ] 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (50457412)
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Keywords | 中国文学 / 旧抄本 / 東アジア文化交流史 / 白居易 / 白氏文集 / 文選 / 漢籍 / 出版 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究を踏まえ、〔1〕日本漢籍史に関する基礎的研究〔2〕『白氏文集』に関する旧抄本資料の整理及び総括という二つの研究テーマに分けて調査及び研究を行った。具体的には、以下のような研究成果を得られた。(1)日本の古文献にみえる曹憲『文選音義』の逸文を蒐集し、さらに、これらの資料に基づき、現在不明である曹憲の事跡を明らかにした。(2)明治初期の資料に基づき、従来空海大師の作と見なされている』『文筆眼心抄』は、西村兼文の贋作であることを指摘した。(3)旧金沢文庫本『白氏文集』の各巻末の職語を取り上げ、中世学術史における有益な史料という視点から、その本文を解読し、さらに、奥書にみえる人物及びテキストの考証作業を試みた。(4)日本に現存する旧鈔本『長恨歌並序』を蒐集して考察を加え、その巻頭に附している「序」が、従来指摘される日本人による偽作ではなく、白居易自身の作品であることを明ちかにした。現存諸本に収録されている陳鴻の「長恨歌伝」は、あくまで後人により挿入されたものであることを指摘した。(5)日中に現存する「酔吟先生墓誌銘」の諸伝本を蒐集して考察を加え、従来の研究においてはこの墓誌銘が、白居易の「酔吟先生伝」と混同されていることを明らかにした。また、「酔吟先生墓誌銘」は、宋代文人による偽文であることを指摘した。(6)日本中世叢林に関わる旧抄本「新楽府」資料を蒐集して分析を行った。(6)『江談抄』に見える全唐詩の逸句及び白居易逸詩を蒐集し、『全唐詩』及び『白氏文集』の更なる補綴を行った。(7)引き続き日中各学術機関及び図書機関に所蔵する自居易関連の文物、文献の調査を行った。(8)『白居易の文学と白氏文集の成立-廬山から東アジアへ』及び『漢籍東漸及日藏古文献論考稿』(共著)を公刊し、更に科研報告書を作成して本研究の総括を行った。
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