2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720124
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大岩本 幸次 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (10336795)
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Keywords | 韻書 / 字書 / 類書 / 元代 / 明代 |
Research Abstract |
22年度は明代の海篇類字書や海篇類を踏襲した本邦の古辞書について種々のデータを取る作業を行うのに並行して、元代の官僚であった楊桓(1234-1299年)の編纂した韻書『書学正韻』における韻目、収字配列、反切、等位整理、増字の内容について具体的に調査を行った。従来、『書学正韻』については宋代の『広韻』(1008年)に依拠して編まれた可能性を指摘する見方や、楊桓の編纂した文字学の著書である『六書統』の内容を韻に従って並べ替えたものとする見方がなされていたが、今回の調査の結果、楊桓は『書学正韻』の編纂に際して、韻目が206種類揃っている宋代の『集韻』(1037年)を基盤として用い、そこに160韻構成の『五音集韻』(1208年。金・韓道昭の編。『書学正韻』に用いられたのは元版)を参考にして字母および等位の表示を加え、反切も『五音集韻』を参照して部分的に変更し、さらに『五音集韻』から『大広益会玉篇』(1013年)等に由来する字や『五音集韻』編者の創見によって生じた字を取捨選択して組み込む、そういった編纂過程を経た資料であることが分かった。宋代を過ぎると『広韻』に比して存在感を失っていくかにみえる『集韻』が『書学正韻』のベースに用いられていることについては、『集韻』の収録字数の多さに加えて、その義訓に『説文解字』(許慎撰、100年)が多く採られている点が、文字の学を推究する楊桓の考えに合致した部分があったと推測される。 また、海篇類字書の版本状況把握のため海外の図書館を訪問して調査を行ったが、現在までのところ新たな種類の海篇類字書は発見されていない。ただ、明代の類書や字書などに興味深いものをいくつか見出すことができ、これらについては来年度以降における調査整理や成果公表を考えている。
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