2011 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代における日韓文化交流に関する研究―柳宗悦と廃虚派を中心に―
Project/Area Number |
21720126
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶谷 崇 北海道工業大学, 未来デザイン学部, 准教授 (10405657)
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Keywords | 柳宗悦 / 朝鮮人留学 / ナ・ヘソク / ミン・テウォン / 廃墟派 / 文化交流 / 日韓関係 |
Research Abstract |
平成23年度は平成21~22年度に実施した関連文献資料調査によって得た資料の整理・分析作業を行った。収集した関連資料数は1次資料、2次資料合わせ約600点程度である。またそのうち100点程度が韓国語文献である。年度前半はそれらの資料の電子化およびデータベース化作業を行った。またそれと並行して韓国語文献の読解作業を進めた。昨年度から進めているナ・ヘソクおよびミン・テウォンの残した文章の翻訳作業も継続して行っている。本研究課題において主要な文献であるミン・テウォンによる『音楽会』の翻訳作業はほぼ終了している。 加えてH23年度は、戦後の日韓の文筆家、文化人の諸言説も検討対象とした.これは当初計画には含めていない研究対象であったが、柳宗悦と朝鮮人知識人との交流、およびそれが後世へ及ぼした影響などを検討する際、戦後の1次資料も分析対象とすべきことがわかった。例えば白洲正子や立原正秋、崔承萬などである。これらの人物も対象として広く文献に当たった。 11月には日本比較文学会において、立原正秋の生涯と朝鮮文化にかかる研究発表を行った。また、12月には、有島武郎研究会において「大正知識人たちの「科学」-柳宗悦における「科学」言説の変容をたどって-」というタイトルで研究発表を行った。柳宗悦初期の科学言説を分析するものであったが、後に朝鮮美学や民芸運動へとつながる柳宗悦の思想的基盤を明らかにした。本研究を通して明らかにしようとしている文化交流の担い手である日韓知識人の思想的基盤の一端を明らかにできたことは有意義であった。 3月に、韓国国立中央図書館を訪れ、さらなる文献調査作業を行った。また、あわせて韓国での刊行をめざしている共著『柳宗悦と朝鮮』出版に関する打ち合わせを、韓国ソミョン出版社の担当者と行った。H24年度上半期には概ね出版することができる段階まで作業をすすめた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と考えるが、収集した韓国語文献資料の読解・分析作業が当初計画より遅れている。原因は研究調査の過程において当初計画の調査対象では不十分と判断し、対象とする研究範囲をさらに拡大したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究課題の最終年度であり、研究成果のまとめ・発表段階である。不足がある場合はさらなる文献資料調査作業を行うが、基本的にこれまで収集した文献資料を整理、分析作業が中心となる。韓国語文献については、アルバイトとして韓国人留学生の協力を仰ぎ、粛々と進めていく。作業が若干遅れている状況であるため、これまでの遅れを挽回しつつ、本年度の後半および来年度の学会発表、論文発表を目標として、まとめ作業を進める。 また韓国で出版が計画されている共著『柳宗悦と朝鮮』についても、本年度中に刊行する。
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