2012 Fiscal Year Annual Research Report
学際的アプローチによる中国-欧米間映画関係史構築に関する研究
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21720129
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅原 慶乃 関西大学, 文学部, 准教授 (30411490)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 中国映画史 / 上海Y.M.C.A. / 非商業上映 / 産業映画 |
Research Abstract |
昨年度までの研究において、中国と諸外国、とくに西欧諸国や日本との関係史にかんする研究において長きにわたり前提とされてきた「外国勢力による中国映画界に対する抑圧」という状況が、個々の現象レヴェルにおいては脆弱である事例や、必ずしも実態をそのまま反映したとは言いがたい事例が散見されることが明らかとなった。こうした事例においては、両者の関係は常に流動的で状況に応じ臨機応変に変化することが、本研究によって確認された。本年度はこの視座を補強するために、「中国対外国」という二項対立的構図の言説が映画界で固定化される1920年代以前の上海に焦点を当て、中国と外国との関係、交渉をめぐる諸相に着目し、分析した。その結果、1910年代には映画や映画上映にまつわる猥雑さや通俗性が問題視されはじめる一方で、主に宗教団体や社会教化団体、そして当時勃興しつつあった学生団体等が、外国映画の鑑賞を健全な娯楽として各種の活動に包摂していくと同時に、映画の「教具」としての側面に大きな関心を注いでいた実態が浮き彫りとなった。なかでも、上海Y.M.C.A.(上海基督教青年会)の映画および幻灯上映活動が、その後の中国映画史の展開に大いなる影響を与えたこと、とりわけ商務印書館影片部の設立に大いなる影響を与えていた可能性が濃厚であるという一定のエヴィデンスを得ることができた。また、上海Y.M.C.A.は米国の上海領事館や商務省内外通商局上海オフィス等とともに、米国製産業映画、教育映画の普及を明確に意図した活動を展開しており、こうした傾向が後の中国映画界における映画の教育的作用への関心の高まりに少なからぬ関連があることも確認できた。 以上の分析から、映画の商業上映の領域では可視化されにくかった中国映画界と外国映画界の非対立的な相互作用が、1910年代の上海において存在していたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)