2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90344530)
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Keywords | 漢語文法史 / 漢訳仏典 / 漢語古代方言 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は次のようにまとめられる。 (1)「漢訳仏典言語の文法史資料としての価値」についての研究 まず上中古間語法史の重要な資料である『六度集経』言語の口語性に関する論考を台湾で正式に発表し(「略談《六度集経》語言的口語性--疑問代詞系統為例」)、当該の言語にみられる一見文語的な「古い」文法成分であっても当時の自然言語に由来すると推定される複雑な文法規則が見出される場合、原則的には口語から乖離した文法成分ではないと認定できると主張した。 また漢訳仏典言語にのみ広くみられる「特殊な」文法成分について、それが原典言語の影響か否かを漢語文法史の視点から検討した中国語で既発表の論考を、インド学・仏教学との連携を視野に入れつつ日本語で発表し(「早期漢訳仏典言語の上中古間文法史研究としての価値」)、アスペクト助詞「已」、人称代名詞複数接辞「曹」「等」などの一部の用法については、原典言語の影響が想定されると指摘した。 (2)「古代漢語方言」についての研究 文法史を考える場合、方言差の問題を考慮することが不可欠である。その意味で漢代の揚雄『方言」に基づく古代方言の研究は、本研究課題と密接な関連を有する。本年度は、揚雄『方言』における「江淮」「楚」「南楚」の三地域間の言語的関係について、揚雄『方言』における共時的な語彙分布の偏在に着目することにより、より古い時代には三地域が言語的非常に近い状況にあったものが、後に「楚」が国力の増大とともに北方諸国と繋がりを持つようになった結果、他の二地域と言語的な距離が広がった、とする推定し得ると主張した(浅談揚雄《方言》中的語言層次問題--以"江淮"方言為例--)。
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