2010 Fiscal Year Annual Research Report
短絡的表現から見た語用論と統語論の接点-日英語の名詞表現を中心に
Project/Area Number |
21720134
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西田 光一 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (80326454)
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Keywords | 短絡的表現 / 語用論 / 統語論 / 不定名詞句 / 不完全な構造 / 自称語 / ゼロ限定詞 / 話し手と聞き手 |
Research Abstract |
平成22年度は、短絡的表現について、語用論発、統語論着という方向を示す事例研究を積み重ねた。特に記事や番組のタイトルでの短絡的名詞表現に着目した。具体的には、英語では、"From A Mother's Perspective"のような記事のタイトルで、不定名詞句a motherは一人称志向を持ち、この記事の作者が、自分が母親であると示すことができる。日本語では、「田中レナが選ぶ私の一冊」や「僕の一曲、私の一曲」のように、タイトル中の「僕、私」といった自称語が照応的または変項的に解釈される。英語については日本英語学会の英文の学会誌に論文が掲載を認められた。この論文では、構造的に不完全な名詞句と文脈の関係を明らかにした。英語では構造的に不完全な不定名詞句は、文脈に応じて主題の一部に照応するゼロ限定詞が付いている。そのため、自己言及の文脈で一人称の代用ができる。一方、日本語についてはBerkeley Linguistics Societyで口頭発表した。日本語の「私」などの自称語は、聞き手に対する話し手を表すので、当該文脈で問題とする聞き手を変えることにより、実際の話し手を指したり、文中の話し手に照応するように自称語が指示の値を変えることができる。文脈に応じたゼロ限定詞から不定名詞句の分布上の制約を導き、自称語を使う話し手と聞き手の関係から文内の照応を導く点で、両者は語用論発、統語論着の方向を示す事例研究になった。日本英語学会第28回大会では「迂言と縮約と日英語の差異」と題するワークショップを主催し、短絡的表現全般について理解を深めた。
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