2009 Fiscal Year Annual Research Report
文処理における依存関係の計算アルゴリズムとその習得過程の解明
Project/Area Number |
21720152
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小野 創 Kinki University, 語学教育部, 講師 (90510561)
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Keywords | 日本語 / 文処理 / 文法的依存関係 / Wh疑問文 / 自己ペース読文課題 / 心理言語学 |
Research Abstract |
人間の文処理過程の研究において,これまで文法的依存関係は多くのパラダイムを提供してきた.その文法的依存関係の処理アルゴリズムの緻密な認知過程とその習得過程を明らかにすることがこの研究の目的である.本年度は言語の認知過程に関する(1)~(3)の研究を行った.(1)日本語の副詞「いったい」にまつわる文生成過程を,文完成課題を用いて検討した.日本語母語話者が,複雑な処理を行う場合に限定的に文法規則を破るような文を生成することがわかった.このことは,文法的依存関係にいくつか違うタイプのものが存在し,異なる処理方略が存在することが示唆された.(2)依存関係の処理に構造的要因や線的距離の要因が関係することは様々な先行研究で指摘されていたが,日本語の関係節を用いた読文実験を実施し,格助詞の連続による予測の効果,またトルコ語等動詞の語尾変化に特徴が見られる言語では形態的な要因といった複数の要因が存在することを明らかにした.(3)日本語のように語順が比較的自由な言語では,正規語順と異なる語順の入力があった際に正規語順の文ではみられないような依存関係の処理が必要とされている.入れ替え可能な文要素を題材とし,事象関連電位計測実験を実施し,非正規語順の入力が認知された時点で,左前頭に陰性の電位が観察された.これは文法処理の困難さを反映していると見られる成分で,依存関係の処理について非正規語順の文を題材にすることで多くの進展が見込まれることが示唆された.これらの研究成果を国内や海外の学会で発表するとともに,複数のワークショップや学会に積極的に参加し,心理言語学,神経言語学,理論言語学の情報を収集し,他機関の研究者と意見交換を行った.
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Research Products
(13 results)