2010 Fiscal Year Annual Research Report
文処理における依存関係の計算アルゴリズムとその習得過程の解明
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21720152
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小野 創 近畿大学, 理工学部, 講師 (90510561)
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Keywords | 日本語 / 文処理 / 文法的依存関係 / Wh疑問文 / 自己ペース読文課題 / 心理言語学 |
Research Abstract |
本年度は,日本語に見られる依存関係について,複数のパラダイムを用いて研究を実施し,国内外の研究会や学会に参加し,多くの情報を収集することができた。特に以下の3つの項目について学会などで発表し,来年度に向けて準備を進めた。(1)日本語の副詞「イッタイ」の性質について文完成課題を用いて検討した。新たに文脈の効果を操作要因として導入することで,副詞イッタイの文法的性質とその語用論的性質について同時に検討することが出来た。結果として,イッタイの文法的性質が談話上の話題や焦点の存在によって正確に処理されることが分かった。次年度には調査対象を日本語の学習者に拡大することで習得過程の解明に取り組みたい。(2)「誰」「どの学生」といったいわゆるWh疑問詞の処理過程について読文課題を用いて検討した。特にWh疑問詞の統合過程が距離の操作によってどのように変化するのかを調査した。実験により,Wh疑問詞の統合が部分的な場合でも距離の効果が観察され,依存関係の処理の中でも複数の統合処理が行われていることを提案した。この研究では単純な要素の統合処理について検討したが,次年度にはイッタイを含んだWh疑問文など複雑な依存関係を持つ構造の処理についても対象を広げていきたい。(3)日本語のアスペクトの処理について研究を実施した。主に副詞や後置詞句と動詞の間にみられる意味的/文法的依存関係の計算がリアルタイムでどのように行われるのかを事象関連電位を計測する実験を実施した。アスペクトの不一致条件の動詞位置で左前頭に優勢である陰性電位が観察され,語彙的曖昧性の処理との関連が主張された。今後も追加の実験を実施する予定である。
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Research Products
(14 results)