Research Abstract |
本年度は,研究計画の最終年度であったため,これまでの研究成果をまとめ上げることに多くの力を費やした。しかし,当該研究課題に関連する研究を進め,さらに発展させるための準備も同時に実施した。本年度の成果として以下の2点を挙げる。(1)特に,日本語文処理研究の中心的テーマであるWh句の処理に関して,英語のWh句の処理と比較することで,日本語のように主要部後置型言語の特徴を細かく検証することが出来た。特に,Wh句とそれを文法的に認可する終助詞「か」の距離の影響,また両者の構造的な関係,それらが生み出す文全体の容認性について詳細に調べることが出来た。この成果は,副詞「イッタイ」が共起するWh疑問文を使用した実験を実施する際にも貴重なデータを提供した。(2)昨年度実施した文産出実験の結果をどのように解釈するかについてさらに検討を進めた。産出の傾向について,事前の予測とは異なる部分が多く観察されたため,そのような被験者の「揺れ」について多くの情報を収集した。英語の"grammatical illusion"と呼ばれる現象に着目し,まだ十分な理解が進んでない点について,どの様な解決策が提案されているのかを調査した。また,文産出実験にどのような要因が影響するのかを調べるために,関連する実験を実施し,論文として研究をまとめる際の参考にした。以上の様な成果は国内・海外の学会で発表し,またその他の学会にも積極的に参加し,多くの研究者から情報を収集することが出来た。学会や研究打ち合わせでは,非常に充実した意見交換をすることが出来た。
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