Research Abstract |
本研究の目的は,合議を目的とした話し合いの,合意形成過程における「対立」の概念を整理し,レベルの異なる同意/不和(agreement/disagreement)を多層的に記述する方法論を確立し,それを応用した合議プロセスの評価指標を作成することにある.平成21年度は,a)合議データの整理,b)調査研究,c)同意/不和の概念整理,d)分析単位の検討の四項目を計画し,それぞれ実施した.a)合議データの整理に関しては,合議データの18対話に対して,分析に必要な談話標識,フィラー,感動詞などの言語的タグの付与,および半分の9対話に対して,視線方向の非言語的タグを付与した.これらのタグ情報は,参与者の合議への参与の流れを構造化するための基本データとなる.このデータの一部を元に「反論」と「対比談話標識」との関係性を分析した結果を,認知科学会第26回大会で報告した。また,b)調査研究で得られた,国内外の対話・議論研究における発話単位化およびアノテーション手法をベースとして,合議データを分析するための基本単位を検討し,「主張」「理由」「根拠」「感想」「同意/不同意表明」などの,相互行為上の何らかの意味をもったまとまりを単位として,これらを発話末の言語的特徴と,相互行為的な特徴から単位化するためのマニュアルを作成し,a)で作成した合議データに対して,単位化を行った.ただし,この単位を,様々なレベルがあると想定される同意/不和の構造を分析するに,妥当であるか,「最小の」単位であり得るか,などは,単位化されたものに,「同意/不和/中立」等のラベリングをし,検証を重ねる必要があるため,平成22年度以降に進める予定である.c)同意/不和の概念整理に関しては,この単位化手法の妥当性の検証作業中に整理されるので,平成22年度以降に検討を継続する予定である.
|