Research Abstract |
本研究の目的は,合議を目的とした話し合いの,合意形成過程における「対立」の概念を整理し,レベルの異なる同意/不和(agreement/disagreement)を多層的に記述する方法論を確立し,それを応用した合議プロセスの評価指標を作成することにあった.平成23年度は,メンバーの発言における,評価的表現を抽出し,その意味的指向性を考慮し,議論テーマや他者の発言・意見との関係性を示すような,多層的なラベルである,「賛否評価表現タグ」(「テーマ賛否」「意見賛否」「対人賛否」「価値」「引用」「感情」「事実」「願望」「投射」およびその極性ラベル)を設計し,大学生による議論データ10対話に対し付与した。これによって,テーマに対する直接的な賛否表現だけでなく,他者の意見に賛同するという正の表現や,引用や感情的表現が,結果としてテーマに対しては反対の立場であることをメンバーに表明することになるような間接的な発言を,区別でき,また,話し合い全体を通した,メンバーの意見変容,発言の内部構造,発言間の関係性,などを構造化することができ,H22年度に設計・付与した,「メタ議論タグ」とともに用いることで,話し合い全体の構造を,可視的に把握することができるようになった。この成果を国内会議(言語処理学会大会)において発表した。これによって,破たんなく発言を展開できているか,グループ全体として,偏った意見の展開をさせていないか,少数意見のメンバーが孤立することになっていないか,一つの意見に対して,十分な検討ができているか,など,話し合いの質の評価を客観的に行うことができるようになる。話し合いの構造をこのような評価表現に関連付けた形で構造化した研究はなく,意義があると考えられる。今後,賛否評価表現やメタ議論表現を自動抽出する方法論を開発し,話し合いの自動評価,構造化の自動化などを検討していきたいと考えている。
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