2011 Fiscal Year Annual Research Report
心的過程に着目した属性叙述構文の体系的記述に関する研究
Project/Area Number |
21720158
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
澤田 浩子 筑波大学, 人文社会系, 講師 (70379022)
|
Keywords | 属性叙述 / 構文 / 日本語 / 自然会話 / 属性認知 / 名詞述語文 / 二重主語文 / 所有構文 |
Research Abstract |
23年度は、特に動詞述語構文について日本語の現象を中心に、文レベルで観察される属性叙述の特徴と、談話レベルに反映される特徴の統一的記述を試みた。具体的には、味覚・聴覚・嗅覚を表す言語形式として「~がする」と「~をしている」の両構文を取り上げて、構文間の差異を明確にし、属性叙述に関わる言語現象にどのような概念が関与しているか、検証を行った。その結果、「~をしている」構文は、「~がする」構文と異なり、「属性付与の主体性」が強く表れる文であり、「知覚の主体」を言語化したり、「知覚」のための心内の探索活動を言語化したりする文では不適格となることが分かった。また、従来、属性の一時性・恒常性が文法性に関わるとされる現象がいくつか指摘されているが、本構文に関わる現象に限って言えば、属性の探索活動の活性化の度合いによって説明されるべきであることが分かった。この研究成果は雑誌論文1件(2012年3月)において公表した。 また、21・22年度より継続して自然会話データを収集し、約50時間の複数人(2~8名)による会話の映像・音声データを得た(これらは現在、限定的にだがWEB上で公開を行っている。http://www.lingua.tsukuba.ac.jp/~sawada/data.html)。これらの自然会話の観察を通じて、23年度は主に、「語り(Narrative)」の構造における「評価(Evaluation)」の部分が、談話にどのような形式で表れ、会話参与者によって引き継がれていくのか、記述と類型化を行った。この成果は口頭発表1件(2012年3月)を通じて公表している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度までの目標である属性叙述データベースを作成するための、基本となるデータはすでにほぼ十分に収集できている。また、現段階において、二重主語文、名詞述語文、動詞述語文のそれぞれについて、複数の構文現象を取り上げ、構文を体系的に記述するのに有効な概念を特定が進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、当初の予定通り研究を進める。ただし、平成24年度は本研究課題の最終年度であるため、特にデータベースの公開に向けて、集中的に作業を行う。年度の前半で、属性叙述に特化したタグ付与・カテゴリー化などの作業を終える。また、必要な人員を雇用するなどして、プライバシー保護のためのマスキング処理を集中的に行い、年度末までに公開可能な状態にする。
|
Research Products
(2 results)