2009 Fiscal Year Annual Research Report
古代文献における子音韻尾字を中心とした萬葉仮名の研究
Project/Area Number |
21720161
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
尾山 慎 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 特任講師 (20535116)
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Keywords | 二合仮名 / 多音節訓仮名 / 地名 / 子音韻尾字 / 萬葉仮名 |
Research Abstract |
本年度は、萬葉集における二合仮名表記の語分節との対応に関する研究(1)、及び、多音節訓仮名との関係についての研究(2)と、同仮名が用いられた地名表記に関する研究(3)を行った。 (1) 萬葉集における二合仮名表記例をすべて抽出し、文字列上のどの部分に位置して、それが語構成上の切れ目とどのように対応しているかを考察した。その結果、二合仮名は、文字列上のどこにでも位置することはできるが、助辞あるいは語幹など、分節に沿った使用上の配慮がなされていることがわかった。この成果は論文「萬葉集における非固有名詞表記二合仮名の機能について」(『萬葉』205号2009年10月)で発表した。 (2) 二合仮名と同じ二音節だが、訓をもとにして使われている多音節訓仮名との機能上の差異を見いだすべく、悉皆調査を行った。結果、多音節訓仮名と二合仮名は、訓字主体表記歌巻において、類似した機能を有しつつも、互いに競合しない、棲み分けがなされていることが判明した。このことは、まず口頭発表を行い(萬葉学会全国大会平成22年10月25日於九州国立博物館)、次いでそれを論文化した(「萬葉集における二合仮名と多音節訓仮名について」(『萬葉』207号掲載確定、ページ数未定。今夏刊行予定)。 (3) 古代の地名表記のうち、二合仮名が使われているものを調査した。二合仮名は地名以外にも使用されるが、字種が、地名表記のそれと重複することはほとんどない。希に重複していても、一方は非常に臨時的なものであって、競合はしないように配慮がなされており、これは両者が異なる字種の選択可能性から選び取られていることを意味する。以上を、萬葉集に非固有名詞表記と地名表記の両方の例がある場合(3a)と、そうでない場合(3b)で二分して、それぞれ論文化した。 (3a) 「萬葉集所載地名表記における二合仮名-非固有名詞表記との関係をめぐって-」(『古典語研究の焦点』武蔵野書院刊行2010年2月) (3b) 「萬葉集における地名表記と子音韻尾字-非固有名詞表記例をもたない二合仮名-」(『国語文字史の研究十二』2010年春刊行予定掲載確定)
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Research Products
(5 results)