2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代文献における子音韻尾字音仮名を中心とした萬葉仮名の研究
Project/Area Number |
21720161
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
尾山 慎 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 特任講師 (20535116)
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Keywords | 略音仮名 / 二合仮名 / 表記法 / 用字法 / 訓用法 / 音用法 |
Research Abstract |
これまでに蓄積した万葉集における子音韻尾字音仮名論のうち、留保してきた個別の問題(すなわち各語彙レベル)について考察を深めることができた。たとえば「千遍」の「遍」の訓を巡っての問題がその一つである。この字は、二合仮名「ヘニ」と読まれる一方、訓字で「タビ」とも読まれる。ゆえに、その訓を決定する必要があったが、二合仮名の使用について改めて考察を深めることにつながるものであった(本論考は学会発表をし、さらに論文化したものが刊行済みである)。 本年度は研究期間の最後の年であり、総括をすることにつとめた。これまでの研究全体をそのままつなぎ合わせるというのではなく、それらを踏まえた総合的な位置づけを試みた。具体的には、二合仮名の定位と題し、この種の仮名がなぜ、どのように衰退していったか、それが書記史上いかに位置づけられるかということについての総括的論である。これは塙書房『萬葉集研究』に掲載される(平成24年5月現在刊行待ち)。 また、略音仮名が訓字主体表記で使われうるメカニズムを、使用環境を丹念に調査することで明らかにした。従来、仮名研究は個別の字母のレベルで語られることが多かった。しかし、本研究では、隣接する文字ならびをはじめとして、書記者が"何を見ていたか"という次元からの分析を試み、結果、表記法の実態が見えてきた。この成果は、子音韻尾字音仮名に限らず、萬葉仮名表記の研究に一石を投じるものである。以上の研究を通じ、子音韻尾字音仮名の使用実態とともに、上代における漢字の表語と表音各用法が同居するという書記方法の、その選択と継承のありようの一端がより精密に見えてきたと考える。
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Research Products
(4 results)