Research Abstract |
漢字政策と漢字使用の実態との関連を見るために,当用漢字表補正資料(昭和29年,国語審議会報告)における削除候補字・追加候補字,常用漢字表(昭和56年,内閣告示・内閣訓令)における追加字,改定常用漢字表(平成22年,内閣告示)における追加字に焦点を当て,雑誌90種調査,雑誌70誌調査,BCCWJ(雑誌)での出現状況を調査した。 その結果の一例を示すと,当用漢字補正資料の削除候補字28字は,雑誌90種調査で16字が頻度9未満で「朕・璽」は出現せず,雑誌70誌調査では13字が2001位以下で「劾・朕・璽・脹・謁」の5字が出現しなかった。BCCWJでは15字が2001位以下で「劾・朕・謁・脹・虞」の5字が出現しなかった。当用漢字表補正資料で削除候補に掲げられるとともに,書き換え(附属→付属,濫用→乱用,膨脹→膨張,遵守→順守)が定着した等のことにより,頻度を下げていくものが見られた。また「逓」「爵」のように時代や話題との関連で頻度を下げていると思われるものもある。 次に常用漢字表(昭和56年)追加95字,改定常用漢字表(平成22年)追加196字のBCCWJ(雑誌)における出現情報を見ると,常用漢字表(昭和56年)追加字のうち78字(82.1%)が上位2000位以内に出現しており,常用漢字として定着が進んでいることがうかがわれる。一方,改定常用漢字表(平成22年)追加字196字のうち上位2000字以内に出現するのは103字(52.6%)と半分程度であった。ただし2001-2500位に60字,2501-3000位に20字が出現している。つまり,極めて低頻度という漢字は少ないのであり,今後,常用漢字として定着していくか否か,それにより頻度に変化が見られるか等,観察していくことが必要と思われる。
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