2011 Fiscal Year Annual Research Report
英語の他動詞・自動詞の交替と中間動詞の習得に関する認知言語学的研究
Project/Area Number |
21720175
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
谷口 一美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80293992)
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Keywords | 言語習得 / 構文文法 / 自他交替 / 中間動詞 / 使用基盤モデル / exemplar-based model |
Research Abstract |
平成23年度は本研究課題の最終年度であり、平成21年度・22年度における調査内容を総括すると共に、今後の研究の方向性について検討した。こどもの発話のデータベースであるCHILDESに基づき、自他交替を生じる動詞openおよびmoveの非対格自動詞用法を抽出し調査した結果のひとつとして、これらの非対格自動詞用法の多くが実際には中間動詞的であり、否定形の多用や、特定の他構文との併用といった特徴的現象が観察された。この事実は、使用基盤モデルによる習得理論として代表的見方となっている、Tomaselloによる「動詞の島」からの一般化という構文形成プロセスとは相容れず、他の理論的可能性を検証する必要性が生じていた。そのため本年は、Bybee(2010)によって提案されたexemplar-basedmodelによる構文文法理論の有効性について、主に検討した。Bybeeの見方では、exemplarと呼ばれる具体的事例が類似の事例を引きつけ、抽象化を伴わず具体性を維持したままでカテゴリー形成が可能であるとみなされる。本研究では、BNC, Word Banksといった主要コーパスを用い、現代英語における中間動詞用法のexemplarを"sell well"と同定し、その統語的・機能的特性を分析した。その結果、こどもの習得と同様、高頻度の中間動詞用法の定着から新たに非対格用法が獲得されるという仮説がさらに支持されることが明らかとなった。以上、本研究から、特定のexemplarの定着を媒介とする構文形成のプロセスの存在が示唆されるに至った。
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Research Products
(5 results)