2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語史における空の虚辞主語の消失に関する実証的・理論的研究
Project/Area Number |
21720176
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 Shimane University, 教育学部, 准教授 (00325036)
|
Keywords | 英語史 / 統語論 / 生成文法 / 言語変化 / 形態論 / 空の虚辞主語 / 動詞第二位現象 / 豊かな動詞屈折接辞 |
Research Abstract |
本研究の目的は,英語史における空の虚辞主語の消失過程を動詞屈折接辞の衰退および動詞第二位語順消失との関連で実証的・理論的に明らかにすることである。今年度は,形態的変化の統語的影響を測定するための文献調査を行うとともに,形態論と統語論のインターフェイスに関する理論的研究を進めた。後者の成果に基づいて空主語(pro)の一般的認可条件に関するモデルを構築し,論文"A Note on the Person Split of Pro-Drop in Early English"として公刊した。 当該論文においては,分散形態論の理論的枠組みに則り,proを独立した語彙項目としては措定せず,原始的代名詞類PRONOUNが音声的に具現化されない場合にproが得られると仮定した。その上で,以下の2つの条件を満たす場合に,PRONOUNは音声的に具現化されないと提案した。(i)同一最大投射XPの内部において,指定部のPRONOUNと主要部Xのφ素性の値が一致し,かつ(ii)PRONOUNの指示対象が主要部Xに挿入された語彙項目から復元可能である場合。 このモデルが与えられると,proの出現に関する通言語的差異は以下のように説明される。動詞の一致形態素が機能範疇Tにおいて具現化し,主語がTP指定部を占めるイタリア語のような言語においては,上記の認可条件がともに満たされるため,proが自由に現れることができる。それに対し,動詞の数一致形態素がTopによって,人称一致形態素がFinによってそれぞれ担われ,代名詞類がTopPの指定部を占める初期英語のような言語においては,数素性のみを指定されたPRONOUNだけが上記の条件を満たす。この場合,PRONOUNは虚辞として解釈される。また,動詞の一致形態素が乏しい現代英語のような言語においては上記の条件(ii)が満たされず,PRONOUNは常に音声的に具現化されなければならない。
|
Research Products
(1 results)