2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミニマリスト・プログラムにおける例外的格標示構文の研究
Project/Area Number |
21720177
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
菅原 美佳 Tohoku Pharmaceutical University, 薬学部, 講師 (00405911)
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Keywords | 生成文法 / 例外的格標示構文 / フェイズ理論 |
Research Abstract |
本研究は、ミニマリスト・プログラムの枠組みにおいて、人間の言語計算の最適性を支配する原理の解明に近づくためのひとつの手段として、例外的格標示構文にみられる現象やそれに関与する統語操作を研究するものであるが、21年度はその第一段階として、例外的格標示構文に関する言語データの収集を行い、記述的一般化を行った。まずデータ収集に関しては、主に言語学関係の諸文献から収集を行った。加えて、データの容認性判断の精度を上げるため、日本語、英語、およびルーマニア語の母語話者に対してインフォーマント調査も行った。なお、ルーマニア語の例外的格標示構文に関しては、生成文法においてはこれまでほとんど注目されておらず、扱われている文献が少ないため、まずそれが本当に例外的格標示構文であるということを説得的に示すことに時間を割いた。 次に、そのようにして収集したデータを整理し、数人の研究者達と議論を交わした上で、各言語ごとに記述的一般化を行った。具体的には、日本語、英語、ルーマニア語いずれにおいても、例外的格標示構文における埋込み文の主語が、WH移動のような振る舞い、すなわち主節のCP指定部に移動しているような振る舞いをするという内容である。中にはこの一般化と合致しないデータもいくつか存在したので、それらを別個にまとめ、それらが核とみなされるデータであるか、周辺的にすぎないデータであるかを判断する作業を行った。ただし、英語のそれと異なり、日本語の例外的格標示構文の従属節は、定形節であるため、そこからの繰り上げは通常、不可能と考えられている。そのため、上述のような記述的一般化が正しいとしたら、ミニマリスト・プログラムにとっては問題となる可能性がある。この問題をどう解くかが来年度以降の課題となるであろう。
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