2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720178
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
堀田 隆一 Chuo University, 文学部, 助教 (30440267)
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Keywords | 英語史 / 言語変化 / 歴史言語学 / 語彙拡散 / 中英語 / 近代英語 / コーパス言語学 / 方言 |
Research Abstract |
英語史に見られる複数の言語変化について語彙拡散(Lexical Diffusion)の視点から記述と説明を与えることを目的とする本研究の趣旨に沿い、本年度は名詞複数形の歴史的発展について、(1)初期中英語における異形態の分布、(2)現代英語における外国語由来の異形態の分布、に焦点を当てた。 (1)の研究では、方言間にみられる分布の共通点と相違点について二つの論考をおこなった。一つは、語彙拡散理論の予想とは一見すると異なる分布を示す南部方言の状況を、複数のテキストの分析により明らかにしたものであり、理論の可能性と限界を示唆することができた。結論として、語彙拡散理論は個々のテキストの文献学的な分析による裏付けと修正のもとに発展されてゆくべきであることが確認された。もう一つは、やはり南部方言を中心としつつも方言全体の異形態の分布を分析することにより、語彙拡散を進行させた二つの主要因を同定することができた。量化された客観的な分析から主要因を同定できたことは、語彙拡散の視点から本問題に取り組むことの正当性を示したともに、本問題が広く語彙拡散の理論的発展に貢献しうることをも示した。 次に(2)の研究では、同じ名詞複数形の問題ではあるが、時代を20世紀の現代英語期に移し、外国語由来の特殊な名詞複数形のs複数形への規則化という言語変化を論じた。複数の辞書とコーパスを用いて20世紀の通時的変化を俯瞰した結果として、非常に緩やかな速度ではあるが着実に規則化の方向へ流れていることが判明した。語彙拡散の予想するS曲線を想定するのであれば、当該変化はいまだ変化の初期段階である。今後この傾向が続いてゆくのであれば、変化を推し進める主要因は何であるか。(1)の研究とも呼応し、語彙拡散の理論的発展に関係しうる新たな問題が生じた。
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Research Products
(4 results)