2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720180
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
前川 貴史 北星学園大学短期大学部, 講師 (50461687)
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Keywords | 名詞 / 統語論 / Head Driven Phrase Structure Grammar / 英語学 / 言語学 |
Research Abstract |
本年度は,Head-driven Phrase Structure Grammar(以下HPSG)の理論的枠組みによって,英語と日本語の名詞が生起する統語的環境の性質を明らかにする研究を行った。具体的な成果は以下のとおりである。第1に,17th International Conference on Head-Driven Phrase Structure Grammar(7月9日~10日:パリ)にて,日本語の「花子が/の来る日」のような、名詞修飾節内の主語をマークする格助詞が交替を示す「が・の交替」現象にはどのような言語的メカニズムが関わっているのかを解明した.第2に,英語語法文法学会第18回大会シンポジウム(10月16日:日本大学文理学部)での発表では,英語の冠詞と名詞の統語的な側面に焦点を当て,冠詞と名詞とが句を成している場合どちらが主要部であると考えられるかという問題をHPSGの立場から考察した.第3に,日本英語学会第28回大会ワークショップ(11月13日:日本大学文理学部)にて,英語の名詞の限定詞との統語的関係についてWord Grammar(WG)理論とHPSGを比較することにより,すべての統語構造を依存関係によって記述するWGの分析に対し、句構造を仮定するHPSGの分析のほうが適切であることを主張した。最後に,『北星学園大学短期大学部北星論集』に投稿し掲載された論文では,英語のhundredやdozenなどの準数詞と普通名詞とのあいだに見られる相違点、例えば単数形の準数詞は複数形の限定詞と組み合わせることができることなどについて,限定詞がfunctorとして主要部名詞を選択すると仮定する分析によってこれらの現象がうまく説明できるということを示した。これらの研究を通じ、日本語や英語の名詞をめぐる諸現象のかなりの部分がHPSGの枠組み定式化できることが明らかとなり、今後研究対象を広げることによりさらに多くの現象が説明できるようになるものと期待される。
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