2011 Fiscal Year Annual Research Report
敗戦後の日本語ナショナリズム言説に関する基礎的研究-元宣教師の日本語教育経験から
Project/Area Number |
21720182
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
牲川 波都季 秋田大学, 国際交流センター, 准教授 (30339733)
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Keywords | ナショナリズム / 日本語教育 / 日本文化 / 東京日本語学校 / 宣教師 / 教授法 |
Research Abstract |
本研究の最大の目的は,敗戦後の日本語教育において,国家や文化というものがどのように教えられていたのかを明らかにすることであった。 2011年度は,2009年度実施の元宣教師へのインタビュー調査を資料化するとともに,そのインタビュー調査結果および2010年度実施のアメリカ・ミシガン州ホランド市での史料調査の分析を行った。 インタビュー調査となった元在日宣教師の来日時期から,占領期終了直後が主な考察対象時期となった。この時期,宣教師たちは東京日本語学校など,いわゆる長沼スクールで1年ほど日本語を学んでいたが,日本語の授業内で特に日本文化が強調されたという記憶をもつものは少なく,むしろ,直接法の日本語授業についていくのがやっとだったなど,授業で採用された教授法についての感想が述べられる場合が多かった。日本語授業の後,課外活動として日本人の家庭を訪れ茶道などを学んだという者はあったが,敗戦を経ても失われていない日本・日本人の文化を誇るという教育実践は行われていなかった,あるいは調査対象者の記憶には残っていなかったことが明らかとなった。他方で,文化との関わりはないものの,長沼スクールの教育実践の姿や,その方法を学習者がどのように捉えていたのかについては,当時の記憶,また現在から振り返っての評価を聞くことができた。 この点で,インタビュー調査の映像・音声資料および文字資料(牲川波都季,2012,『敗戦後の日本語ナショナリズム言説に関する基礎的研究-元宣教師の日本語教育経験から-資料集:文字資料編』秋田大学,牲川波都季2012,『敗戦後の日本語ナショナリズム言説に関する基礎的研究-元宣教師の日本語教育経験から-資料集:映像・音声資料編』秋田大学)は,1950年代半ばの教育実践の実態を,実際に受講していた学習者の視点で知ることのできる一次史料と位置づけられる。ただし本資料は,固有名詞の残し方・削除のあり方について検討が必要であり,現時点ではあくまでも希少なインタビュー内容の保管目的のものと位置づけられる。今後,検討と再整理を行い公開資料化する予定である。
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Research Products
(1 results)