2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21720220
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 雄 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50416559)
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Keywords | 外交儀礼(賓礼) / 東アジア / 明朝 / 室町幕府 / 唐物の贈与 / 大内氏 / 遣明船 / 中華皇帝 |
Research Abstract |
本課題研究の2年度目にあたる2010年度は、昨年度から引き続いて、室町時代における唐物の贈与・蕩尽・消費・貸借および外交儀礼(賓礼)等に関する基礎的な史料やデータの収集を行なった。 また、昨年度中までに書きためた、冊封儀礼(受封儀礼)や唐物贈与に関する研究論文・ノートの類を再構成して、年度末にモノグラフ(単著論文集)として刊行することができた(拙著『中華幻想--唐物と外交の室町時代史』勉誠出版、2011年3月)。幸いにも、その改稿・編集作業にともなって、本研究課題に関連し、認識を新たにする点がいくつか出てきた。 主なもののひとつは、「皇帝になりたかった室町将軍(室町殿)」というシェーマである。従来、「日本国王」への執着、天皇権威との相克関係ばかりが注目されてきた室町殿権力にあって、文化史的視点をとくに重んじれば、彼らは幻想の「中華皇帝」(とりわけ北宋末の徽宗皇帝)にこそなりたかったのではないか、という仮説を立てるに至った。今ひとつは、もっとも汎用性の高い唐物であった、貨幣(銅銭・渡来銭・輸入銭)に関し、これまで研究史を二分していた史料の解釈(『鹿苑日録』における「旧銭/新銭」解釈)について、恐らく決定打となる結論を打ち出せたことである。 さらに、唐物・高麗物の舶来品のなかでも屈指の位置を占めた大蔵経の「取引価格」を探るべく、拙稿「大蔵経の値段」(『北大史学』50号、2010年12月)をまとめることができた。これは昨年度の学会報告に大幅な増補を加えて文章化したものである。 以上のような成果と作業結果とをもとに、来年度はとくに外交儀礼面に力を注いで、さらに当該課題にかかる調査研究を進展させていきたいと思う。
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Research Products
(6 results)