2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世前期における地頭支配の歴史的意義に関する総合的研究
Project/Area Number |
21720223
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 亮 Saitama University, 教育学部, 准教授 (90451731)
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Keywords | 地頭請所 / 飢饉・災害 / 下地中分 / 地域的軍事権力 / 没官領地頭 / 京都 / 国衙 / 荘園公領制 |
Research Abstract |
(1)地頭請所・下地中分の事例に関する『鎌倉遺文』収録の事例を悉皆収録し、カード化した。この作業によって地頭請所が自然災害に対応して設定され、あるいは「撫民」を目的として設定される事例などを検出できた。個々の事例の分析はまだ途上であるが、これらの作業の進展を通じて、領主制の発展の基準として捉えられてきた地頭請所を、中世社会・荘園公領制維持の安全弁として捉え直す可能性を見いだすことができた。 (2)畠山重忠の本領と武士団組織の再検討を行い、「豪族的武士団」と従来呼ばれてきた武士団は、本領の規模が郎等と大差ないこと、しかしそれにも関わらず、郡・郷・荘の領域にとらわれない軍事動員を可能にしており、その意味において「豪族的」であること、郷レベルの領地しか持たない畠山氏が北武蔵一帯に影響力を行使し得た背景に、秩父一族と京都・国衙とのつながりによる、政治的・文化的・宗教的な利益を地域社会に誘導しえたことを指摘した。 (3)鎌倉幕府成立期における薩摩平氏阿多氏の権益と薩摩国に設定された没官領地頭職の関係を検討し、阿多氏が薩摩半島中部(島津荘薩摩方および阿多郡)をブロック的に掌握する地域的軍事権力であったことを明らかにした。そして、薩摩国中部における阿多氏の権益は、薩摩国目代・押領使職に由来する薩摩国の行政権を獲得した結果、創出された従来の荘園権益では説明できない郡司レベルより上位の領域的な権益であり、この権益が鎌倉幕府によって接収された結果、郡司を小地頭(在来御家人)として従属させる惣地頭職が島津荘において設置され、郡司が御家人化しなかった阿多郡では通常の地頭職として設置されたことを明ちかにした。この作業によって、地頭職の前身となる権益は、必ずしも下司職などの現地管理権だけではなく、従来の荘園研究では説明できないような領域的な支配権も地頭職設置の淵源たりうることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)